くいなちゃん
2025年9月16日
くいなちゃん

くいなちゃん数学」第4話では、数と数を結びつける関数や写像を解説します! 第1話から読み進めていることを想定しています。
第3話で、整数「\mathbb{Z}」を定義しました。 今回は、いわゆる小数である有理数「\mathbb{Q}」や実数「\mathbb{R}」と、関数や写像について解説します。

1.有理数と実数

さて、ここまで整数について扱ってきましたが、ここからはさらに細かな「有理数(ゆうりすう)」や「実数(じっすう)」を扱います。 これらは、いわゆる「小数」のことです。

1.1有理数



「整数/整数」の分数で表せる、分母が0以外の数を「有理数(ゆうりすう)」といいます。 例えば、「2/3」や「0/1」や「-5/4」は有理数です。 「3.3333\dots」という小数も、「10/3」という分数で表せるので有理数です。
このとき、有理数全体の集合を「\mathbb{Q}」と表すことにします。 つまり、「\mathbb{Q}=\{2/3,0/1,-5/4,3.3333\dots,\dots\}」です。

1.2小数から分数への変換



ちなみに、「1.23123123123\dots」のように数字が循環する小数は必ず「整数/整数」の分数に直すことができ、有理数になります。 「0.5」も、「0.5000\dots」と循環しているので有理数です。
1.23123123123\dots」のように循環している小数を分数に直す方法は以下の通りです。
小数から分数への変換
  • x=1.23123123123\dotsとおく。
  • 小数の循環している一周分が小数点の左に出るように、両辺に10の累乗の数を掛ける。 つまり、1000x=1231.23123123123\dots
  • この両辺から、x=1.23123123123\dotsの両辺をそれぞれ引く。 つまり、999x=1230
  • 式を変形して、x=1230/999=410/333より、1.23123123123\dots=410/333
循環する小数であればどんな小数も、この方法で分数に直せます。

1.3無理数



一方で、循環しない小数のことを、「無理数(むりすう)」といいます。 無理数は、「整数/整数」の分数で表せません。 無理数には、例えば円周率「3.1415926\dots」や、2乗すると2になる数「1.41421356\dots」があります。
そして、有理数と無理数を合わせて「実数」といいます。 実数全体の集合を「\mathbb{R}」と表すことにします。
補足

この「実数」の定義には、「小数」という曖昧なものを使ってしまいましたが、より厳密に定義することもできます。 定義の方法はいくつかありますがその1つを簡単に言うと、有理数を限りなくたくさん並べていくと何かの数に限りなく近づくことがあります。 その数は有理数ではないことがあり、それを無理数と定義します。 有理数と無理数を合わせて実数です。

さて、すべての自然数は、整数の中に含まれます。 また、すべての整数は、有理数の中に含まれます。 従って、今までに紹介した数は下記のような包含関係になります。
主な数の包含関係

自然数\mathbb{N} \subset 整数\mathbb{Z} \subset 有理数\mathbb{Q} \subset 実数\mathbb{R}

1.4主な演算



有理数および実数には、整数と同様に、2つの数a,bに対して、加算「a+b」、減算「a-b」、乗算「a\cdotb」、累乗「a^{b}」、絶対値「|a|」が定義されています。 また0でないbに対して、除算「a/b」も定義されています。 ただしb0の場合、例えば「3/0」などは未定義です。
さらに実数には、「平方根(へいほうこん)」が定義されます。 「xの平方根」とは、x=y^{2}」を満たすyのことです。 例えば「9の平方根」とは、「9=3^{2}」および「9=(-3)^{2}」が成り立つので「3,-3」の2つです。 同様に、「4の平方根」は、「2,-2」です。
平方根のうち正の数のほうを「(せい)の平方根(へいほうこん)」といい「\sqrt{x}」の記号で表します。 つまり「\sqrt{9}=3」「\sqrt{4}=2」です。
またこれを拡張して、x=y^{n}」を満たすyの値を「xn乗根(じょうこん)」といいます。 そして、正のxn乗根を「\sqrt[n]{x}」と表します。 例えば「16=2^{4}」なので、「\sqrt[4]{16}=2」です。
正の平方根の値をいくつか挙げると、以下のようになります。
正の平方根の値
正の平方根
\sqrt{0}=0
\sqrt{1}=1
\sqrt{2}=1.4142135623\dots
\sqrt{3}=1.7320508075\dots
\sqrt{4}=2
\sqrt{5}=2.2360679774\dots
\sqrt{6}=2.4494897427\dots
\sqrt{7}=2.6457513110\dots
\sqrt{8}=2.8284271247\dots
\sqrt{9}=3
正の平方根y=\sqrt{x}をグラフで表示すると、下図のようになります。 x0未満の場合には、2乗してxになる実数が存在しないため、\sqrt{x}は定義されません。
正の平方根のグラフ
正の平方根のグラフ
ちなみに、\sqrt{2}は無理数になります。 簡単ですので、証明してみましょう。
無理数の証明
  • 以下では、もし\sqrt{2}が有理数であるなら矛盾することを示し、消去法で\sqrt{2}は無理数だと証明する。
  • まず、「\sqrt{2}は有理数」だと仮定する。 すると有理数の定義と、\sqrt{2}>0より、ある正の整数a,bを使って「\sqrt{2}=a/b」と表せることになる。
  • 両辺を二乗して「2=a^{2}/b^{2}」。 両辺にb^{2}を掛けて、「2b^{2}=a^{2}」。
  • a,bは正の整数なので、「2b^{2}=a^{2}」の両辺とも正の整数になり、両辺はそれぞれ素因数分解が可能。 両辺をそれぞれ素因数分解すると、素因数分解の一意性により、両辺の素因数は一致するはずである。
  • a,bを二乗すると、それらの素因数の個数は二倍になるため、「b^{2}」と「a^{2}」の素因数のうち2の個数はそれぞれ偶数個である。 したがって、「2b^{2}=a^{2}」の素因数のうち2の個数は、左辺は奇数個、右辺は偶数個となり、一致せず矛盾。
  • よって、「\sqrt{2}は有理数」という命題はになることが分かったので、排中律により、「\sqrt{2}は有理数でない」という命題が真になる。 つまり、\sqrt{2}は無理数である。(証明終)
このように、「\negpが成り立つと仮定してわざと矛盾を導き、消去法でpを証明する」という証明方法を「背理法(はいりほう)」といいます。

2.多次方程式

2.1一次方程式



それでは、実数の方程式に挑戦してみましょう。 まずは簡単な下記の問題です。
一次方程式の問題
問題

2x-3=5を満たすxをすべて求めよ。

ax+b=0(ただしa\neq0)」の形の方程式は「一次方程式(いちじほうていしき)」と呼ばれます。 一次方程式は両辺に同じ数を足したり掛けたりするだけで簡単に解けます。
一次方程式の問題の答え
  • 2x-3=5の両辺に3を足して、2x=8
  • 2x=8の両辺を2で割って、x=4
  • よって、2x-3=5を満たすx4

2.2二次方程式



次はやや複雑な、下記の問題です。
二次方程式の問題
問題

x^{2}+4x-12=0を満たすxをすべて求めよ。

ax^{2}+bx+c=0(ただしa\neq0)」の形の方程式は「二次方程式(にじほうていしき)」と呼ばれます。 二次方程式は、「(x+a)(x+b)=0」の形に変形できれば簡単に解けるため、この形になることを目指します。
まず、「(x+a)(x+b)=0」の式の左辺を展開します。 「p(q+r)=pq+pr」という規則がありますので、これを繰り返し適用して括弧を外していくと、「(x+a)(x+b)=(x+a)x+(x+a)b=x^{2}+ax+xb+ab=x^{2}+(a+b)x+ab」と変形できます。 問題の式に近づきました。
この「x^{2}+(a+b)x+ab=0」と問題の式「x^{2}+4x-12=0」を見比べると、「a+b」のところに4、「ab」のところに-12を当てはめれば、同じ式にできることが分かります。 ここで「a+b=4」「ab=-12」となるようなa,bを適当に考えれば「a=6,b=-2」だと分かります。 当てはめると「x^{2}+(6+(-2))x+6(-2)=0」となりました。
さて、ここまでの結果から、問題の式「x^{2}+4x-12=0」は「x^{2}+(6+(-2))x+6(-2)=0」に変形でき、これは「(x+6)(x+(-2))=0」に変形できることが分かりました。 つまり、問題の式の代わりに「(x+6)(x-2)=0」を満たすxを求めればいいことになります。 するとこれは、「x+6」と「x-2」を掛けると0になるという意味ですので、少なくとも一方が0でなければなりません。
x+6」が0の場合を考えると、x=-6だと分かります。 「x-2」が0の場合を考えると、x=2だと分かります。 両方同時に0になることはありません。 よって、これらが解の全部です。 つまりx^{2}+4x-12=0を満たすxは、x=-6,2です。

2.3二次方程式の解の公式



ちなみに、二次方程式の解は「二次方程式(にじほうていしき)の解(かい)の公式(こうしき)」と呼ばれる下記の式でも解けます。
二次方程式の解の公式
二次方程式の解の公式
確かに、先ほどと同じ解が得られました。

3.写像

さて最後に、関数と写像について解説します。
写像(しゃぞう)」とは、ある集合のすべての元それぞれをある集合の元に対応付けるもので、「関数(かんすう)」と呼ばれることもあります。 下図における、元と元とを結ぶ「矢印」の集まりに相当するものが写像です。
写像
写像
写像fが集合\bm{A}の元と集合\bm{B}の元を対応付けることを「f:\bm{A}\rightarrow\bm{B}」と表します。 またこのとき、集合\bm{A}の元aに対応する集合\bm{B}の元を「f(a)」と表します。 例えばこの図では、元a_{1}に元b_{2}が対応付いているため、f(a_{1})=b_{2}となります。
f:\bm{A}\rightarrow\bm{B}」のとき、集合\bm{A}のどのような元aに対しても、対応する元f(a)は集合\bm{B}に1つだけ存在します。 対応先が存在しなかったり、複数存在することはありません。
また写像は、同じ集合の間で対応付けることもできます。 つまり「f:\bm{A}\rightarrow\bm{A}」であっても構いません。
例えば、自然数全体の集合\mathbb{N}に対し、\mathbb{N}の元xを2倍する「f(x)=2x」は、写像「f:\mathbb{N}\rightarrow\mathbb{N}」となります。
「f(x)=2x」の写像
「f(x)=2x」の写像

3.1全射、単射、全単射



f:\bm{A}\rightarrow\bm{B}」において、\bm{A}の元が\bm{B}のすべての元を余すところなく対応付けている場合、fを「全射(ぜんしゃ)」といいます。 厳密には、集合\bm{A}のすべての元aに対するf(a)を集めたものが集合\bm{B}と一致したとき、fは全射です。
また、\bm{A}のそれぞれの元に対応する\bm{B}の元に重複が無いとき、fを「単射(たんしゃ)」といいます。 厳密には、\bm{A}の任意の異なる2つの元a,bに対し、必ずf(a)f(b)が異なるとき、fは単射です。
写像f全射かつ単射であるとき、fを「全単射(ぜんたんしゃ)」といいます。 このとき、\bm{A}の元と\bm{B}の元がちょうど1対1で対応する形になります。
全射、単射、全単射のイメージを下図にまとめました。
全射、単射、全単射
全射、単射、全単射

3.2逆写像



写像fの、元の対応の向きを逆にした写像を、fの「逆写像(ぎゃくしゃぞう)」といい「f^{-}^{1}」と表します。 厳密に説明するとややこしいですが、「f:\bm{A}\rightarrow\bm{B}」「g:\bm{B}\rightarrow\bm{A}」の2つの写像が、\bm{A}の任意の元aに対して常に「g(f(a))=a」を満たし、\bm{B}の任意の元bに対して常に「f(g(b))=b」を満たすとき、gfの逆写像「g=f^{-}^{1}」です。
例えば、「f(x)=x+2」という写像「f:\mathbb{Z}\rightarrow\mathbb{Z}」と、「g(x)=x-2」という写像「g:\mathbb{Z}\rightarrow\mathbb{Z}」を考えると、対応の向きが逆になっていますのでgfの逆写像「g=f^{-}^{1}」だといえます。
逆写像
逆写像
ちなみに、写像fが全単射でなければ、fに逆写像は存在しません。 またfが全単射であれば、必ずfの逆写像f^{-}^{1}が存在し、それは1種類しかありません。
今回は、実数や写像について解説しました。 次回は、三角形や円などの様々な図形について解説します!
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