2024年10月09日くいなちゃん


本記事は「くいなちゃん数学」基本編の補足資料です。 2本の平行線における同位角が等しいことを証明します。

1同位角の定理

今回証明する定理は図1-1です。
同位角の定理
図1-1: 同位角の定理
第5話で説明した「ヒルベルトの公理」を使って証明します。

2外角と内対角の補題

まずは準備として、「三角形の外角が内対角より大きい」ことを証明します。 「内対角ないたいかく」とは、外角と隣り合っていない内角のことです。
では図2-1の定理を証明しましょう。
外角と内対角の補題
図2-1: 外角と内対角の補題
証明は、図2-2のように、内対角の1つから向かいの辺を二等分するように線分を引きます。
外角と内対角の補題の証明
図2-2: 外角と内対角の補題の証明
図のように線分を引くと、ヒルベルトの公理III-5を使うことでが成り立ちます。 ヒルベルトの公理III-5とは簡単に言うと、「2つの三角形に対して、2つの辺とそれらの間の角がそれぞれ等しいなら、残った角もそれぞれ等しい」です。
図を見ると、外角とが重なっています。 これにより内対角と同じ角を、外角と重なる位置に持ってくることができました。 このとき、どのような三角形を考えても、この図のを外角以上に大きくできませんので、三角形の外角は内対角より大きいといえます。 (証明終)
補足

角ECDを外角以上にするには、点Eが直線BC上かそれよりも下側に来る必要があります。 しかし点Aが直線BCよりも上側にある限り、点Eも直線BCより上側に来ますので、どのような三角形ABCに対しても不可能だと分かります。

ちなみにもう一方の内対角も、外角の対角を考えると、内対角の位置関係を逆にできるため同様に成り立つことが明らかです。 (図2-3)。
外角と内対角の補題の証明2
図2-3: 外角と内対角の補題の証明2
また、証明で使ったヒルベルトの公理III-5を図2-4に再掲しておきます。

ヒルベルトの公理III-5(再掲):

1直線上に無い点と、1直線上に無い点に対し、線分と線分が合同で、線分と線分が合同で、角と角が合同であるとき、角と角は合同である。

図2-4: ヒルベルトの公理III-5

3同位角が等しい2直線の定理

次に、「同位角が等しい2直線は平行になる」ことを証明します。 図3-1の定理です。
同位角が等しい2直線の定理
図3-1: 同位角が等しい2直線の定理
2直線が平行であるとは、2直線が共通の点を含まないということです。 図の定理を背理法で証明します。
もし同位角が等しい2直線が平行でないなら、2直線は共通の点を含むため、三角形ができます。 三角形が図の右側にできるパターンと、左側にできるパターンがありますが、を対角に移すと右側と左側を入れ替えられるため、右側だけ考えれば十分です(図3-2)。
同位角が等しい2直線の定理の証明
図3-2: 同位角が等しい2直線の定理の証明
すると図のように、は外角と内対角の関係になります。 先ほどの証明により、外角は内対角より大きくなるはずです。 しかしこれは、同位角が等しいという前提と矛盾します。 よって背理法より、同位角が等しい2直線は平行でなければなりません。 (証明終)

4同位角の定理の証明

最後に、いよいよ「2本の平行線における同位角が等しい」ことを証明します。
ひとまず先ほどのように、同位角が等しい2本の平行線を用意します(図4-1)。
同位角の定理の証明
図4-1: 同位角の定理の証明
このように、同位角が等しい場合に2直線が平行になることは先ほど証明しました。
ではここに、「これらとは同位角が異なるような、点を通って直線に平行になる直線」が新たに引けたと仮定します。 すると、ヒルベルトの公理IV-1と矛盾します(図4-2)。

ヒルベルトの公理IV-1(再掲):

任意の直線と、が含まない任意の点があるとき、を含む平面上に、を含んでと共通の点を含まない直線は複数存在しない。

図4-2: ヒルベルトの公理IV-1
よって背理法より、同位角が異なる平行線は新たに引けないことになります。 つまり、2本の平行線の同位角は必ず等しいです。 (証明終)
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