1同位角の定理
今回証明する定理は図1-1です。
第5話で説明した「ヒルベルトの公理」を使って証明します。
2外角と内対角の補題
まずは準備として、「三角形の外角が内対角より大きい」ことを証明します。 「内対角」とは、外角と隣り合っていない内角のことです。
では図2-1の定理を証明しましょう。
証明は、図2-2のように、内対角の1つから向かいの辺を二等分するように線分を引きます。
図のように線分を引くと、ヒルベルトの公理III-5を使うことでが成り立ちます。 ヒルベルトの公理III-5とは簡単に言うと、「2つの三角形に対して、2つの辺とそれらの間の角がそれぞれ等しいなら、残った角もそれぞれ等しい」です。
図を見ると、外角とが重なっています。 これにより内対角と同じ角を、外角と重なる位置に持ってくることができました。 このとき、どのような三角形を考えても、この図のを外角以上に大きくできませんので、三角形の外角は内対角より大きいといえます。 (証明終)
ちなみにもう一方の内対角も、外角の対角を考えると、内対角の位置関係を逆にできるため同様に成り立つことが明らかです。 (図2-3)。
また、証明で使ったヒルベルトの公理III-5を図2-4に再掲しておきます。
3同位角が等しい2直線の定理
次に、「同位角が等しい2直線は平行になる」ことを証明します。 図3-1の定理です。
2直線が平行であるとは、2直線が共通の点を含まないということです。 図の定理を背理法で証明します。
もし同位角が等しい2直線が平行でないなら、2直線は共通の点を含むため、三角形ができます。 三角形が図の右側にできるパターンと、左側にできるパターンがありますが、を対角に移すと右側と左側を入れ替えられるため、右側だけ考えれば十分です(図3-2)。
すると図のように、は外角と内対角の関係になります。 先ほどの証明により、外角は内対角より大きくなるはずです。 しかしこれは、同位角が等しいという前提と矛盾します。 よって背理法より、同位角が等しい2直線は平行でなければなりません。 (証明終)
4同位角の定理の証明
最後に、いよいよ「2本の平行線における同位角が等しい」ことを証明します。
ひとまず先ほどのように、同位角が等しい2本の平行線を用意します(図4-1)。
このように、同位角が等しい場合に2直線が平行になることは先ほど証明しました。
ではここに、「これらとは同位角が異なるような、点を通って直線に平行になる直線」が新たに引けたと仮定します。 すると、ヒルベルトの公理IV-1と矛盾します(図4-2)。
よって背理法より、同位角が異なる平行線は新たに引けないことになります。 つまり、2本の平行線の同位角は必ず等しいです。 (証明終)