2024年12月22日くいなちゃん


本記事は「くいなちゃん数学」発展編の補足資料です。 全単射と逆写像に関する定理を証明します。

1全単射と逆写像の定理

今回証明する定理は、こちらのページで紹介した、図1-1です。

写像が全単射であること」と「写像に逆写像が存在すること」は同値である。 また、写像の逆写像は全単射である。

図1-1: 全単射と逆写像の定理
まずは、「写像が全単射であること」と「写像に逆写像が存在すること」が同値であることを証明します。 命題が同値であることは、」かつ「」であることを意味するので、これらを順番に証明します。

1.1全単射ならば逆写像が存在する



まず、「写像が全単射である」ならば「写像に逆写像が存在する」ことを証明しましょう。
写像が全単射であるとします。 このとき、は全射なので、任意のについてを満たすが存在します。 または単射なので、このようなは複数存在せず、ごとに1つだけ存在します。
ここで写像を考え、任意のに対して1つだけ存在する、を満たすを対応付ける写像だとします。 このとき、任意のに対し、ならばであり、ならばであると言えますので、の逆写像となります。
よって、写像が全単射ならば、写像に逆写像が存在すると言えました。

1.2逆写像ならば全単射が存在する



次に、「写像に逆写像が存在する」ならば「写像が全単射である」ことを証明しましょう。
写像に逆写像が存在するとします。
このとき、が全射でないと仮定すると、写像の対応付けがない元が存在して、任意の元に対し「」となります。 しかし、このようなについて、逆写像のほうにはとなるが存在し、となるはずですが、任意の元に対し「」となることと矛盾します。 よって、は全射でなければなりません。
また、が単射でないと仮定すると、異なる2つの元「 ()」に対し、対応付けの先が重複してを満たすものがあることになります。 しかし、このとき逆写像のほうには、を満たすが存在することになりますが、を異なる2つの元に対応付けることはできないため、写像の定義に矛盾します。 よって、は単射でなければなりません。
よって、は全射かつ単射なので、写像に逆写像が存在するならば、写像が全単射であると言えました。
以上、「写像が全単射ならば、写像に逆写像が存在する」と「写像に逆写像が存在するならば、写像が全単射である」ことが言えたため、「写像が全単射であること」と「写像に逆写像が存在すること」は同値です。

1.3写像の逆写像は全単射である



最後に、写像の逆写像は全単射であることを証明しましょう。
写像に逆写像が存在するとします。
このとき、逆写像の性質より、任意の元に対して「」が成り立ちますので、の像は、となり、全射の定義を満たします。 よって、は全射です。
また、ある元に対し、「」であるにもかかわらず、「」となるものがあると仮定します。 すると、より、「」となりますが、これは「左辺」「右辺」より、「」となるため矛盾します。 よって、のときには、必ずでなければならないため、は単射の定義を満たします。 よって、は単射です。
以上、は全射かつ単射であるため、は全単射です。 よって、写像の逆写像は全単射になります。 (証明終)
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