2024年11月22日くいなちゃん
ピアノの音階よりも美しいと言われることがある「純正律」を聴き比べてみましょう。
1純正律
なぜ音階がドレミファソラシドの間隔で分割されているかと言いますと、波形で表したときに周期が重なりやすい波長になっているため、同時に鳴らしたときに調和しやすいのです(図1-1)。
ドの周波数を1としたとき、ミは5/4、ソは3/2になっているため、例えばド・ミ・ソを同時に鳴らすと、周波数の整数比は4:5:6という小さな比率になります(図1-2)。
このように、周波数が小さな整数比になるように定めた音階のことは「純正律」と呼ばれ、とても綺麗な響きになるとされています。
2平均律
しかし純正律は、ドの音を基準に他の音の周波数を決定するため、「ドレミファソラシド」をレから始めて「レミファ♯ソラシド♯レ」と鳴らすと、同じ間隔にならず、移調が出来ないという欠点があります。 そこでピアノでは普通、純正律になるべく近くなるように1オクターブを等間隔に分割した、「平均律」と呼ばれる周波数の音階で調律されます(表2-1)。
音名 | 純正律の周波数 | 平均律の周波数 |
---|---|---|
ド | 1.0000 | 2の0/12乗=1.0000 |
ド♯ | 2の1/12乗=1.0595 | |
レ | 9/8=1.1250 | 2の2/12乗=1.1225 |
レ♯ | 2の3/12乗=1.1892 | |
ミ | 5/4=1.2500 | 2の4/12乗=1.2599 |
ファ | 4/3=1.3333 | 2の5/12乗=1.3348 |
ファ♯ | 2の6/12乗=1.4142 | |
ソ | 3/2=1.5000 | 2の7/12乗=1.4983 |
ソ♯ | 2の8/12乗=1.5874 | |
ラ | 5/3=1.6667 | 2の9/12乗=1.6818 |
ラ♯ | 2の10/12乗=1.7818 | |
シ | 15/8=1.8750 | 2の11/12乗=1.8877 |
ド | 2.0000 | 2の12/12乗=2.0000 |
1オクターブを12等分するとちょうど純正律とも近い周波数となり、また移調しても同じ間隔になるため、ポップスやロックや大半のクラシック音楽など普段耳にする音楽はほとんどが平均律で作られています。
3聴き比べ
それでは平均律と純正律はどのくらい違いがあるのでしょうか。 サイン波を使って平均律と純正律の音声を作ったので、試しに聴き比べてみましょう。 ファイル3-1は、図3-1を鳴らしたものになっています。
いかがでしょうか。 純正律を聴き慣れない方にとっては不安定に感じるかもしれませんが、一般的に純正律のほうが和音の響きが美しいとされています。
4どこまで調和するか
さて、周波数の整数比が小さければ美しい響きとなるのであれば、そのような周波数の音を作り出せば、純正律の音階にこだわらなくても美しい和音が鳴らせるのではないでしょうか。 試してみましょう。
ファイル4-1は、周波数の整数比が小さくなる順に和音を作ったものです。 それぞれの音の説明は表4-1に記し、平均律と比べたときの音名も併記しました。
整数比 | 1音目 | 2音目 | 3音目 | |
---|---|---|---|---|
1 | 3:4:5 | ド | ファ | ラ(微↓) |
2 | 4:5:6 | ド | ミ | ソ |
3 | 4:5:7 | ド | ミ | シ♭(かなり↓) |
4 | 4:6:7 | ド | ソ | シ♭(かなり↓) |
5 | 5:6:7 | ド | ミ♭ | ファ♯(微↓) |
6 | 5:6:8 | ド | ミ♭ | ラ♭(微↑) |
7 | 5:6:9 | ド | ミ♭ | シ♭(微↑) |
8 | 5:7:8 | ド | ファ♯(微↓) | ラ♭(微↑) |
9 | 5:7:9 | ド | ファ♯(微↓) | シ♭(微↑) |
10 | 5:8:9 | ド | ラ♭(微↑) | シ♭(微↑) |
11 | 6:7:8 | ド | ミ♭(少↓) | ファ |
12 | 6:7:9 | ド | ミ♭(少↓) | ソ |
13 | 6:7:10 | ド | ミ♭(少↓) | ラ(微↓) |
14 | 6:7:11 | ド | ミ♭(少↓) | シ♭とシの中間 |
15 | 6:8:9 | ド | ファ | ソ |
16 | 6:8:11 | ド | ファ | シ♭とシの中間 |
17 | 6:9:10 | ド | ソ | ラ(微↓) |
18 | 6:9:11 | ド | ソ | シ♭とシの中間 |
19 | 6:10:11 | ド | ラ(微↓) | シ♭とシの中間 |
20 | 7:8:9 | ド | レ(少↑) | ミ(少↑) |
21 | 7:8:10 | ド | レ(少↑) | ファ♯(微↑) |
22 | 7:8:11 | ド | レ(少↑) | ラ♭(微↓) |
23 | 7:8:12 | ド | レ(少↑) | ラ(かなり↑) |
24 | 7:8:13 | ド | レ(少↑) | シ(かなり↓) |
25 | 7:9:10 | ド | ミ(少↑) | ファ♯(微↑) |
26 | 7:9:11 | ド | ミ(少↑) | ラ♭(微↓) |
27 | 7:9:12 | ド | ミ(少↑) | ラ(かなり↑) |
28 | 7:9:13 | ド | ミ(少↑) | シ(かなり↓) |
29 | 7:10:11 | ド | ファ♯(微↑) | ラ♭(微↓) |
30 | 7:10:12 | ド | ファ♯(微↑) | ラ(かなり↑) |
31 | 7:10:13 | ド | ファ♯(微↑) | シ(かなり↓) |
32 | 7:11:12 | ド | ラ♭(微↓) | ラ(かなり↑) |
33 | 7:11:13 | ド | ラ♭(微↓) | シ(かなり↓) |
34 | 7:12:13 | ド | ラ(かなり↑) | シ(かなり↓) |
最初のほうの和音は調和していますが、だんだん周波数の整数比が大きくなるので次第に不協和音になっていきます。 何番の和音まで心地良く聞こえましたでしょうか。 平均律に出てこないこれらの音を使って作曲してみるのも、表現の幅が広がって楽しいかもしれませんね。