
1直積







このように、2つの集合

の元の組み合わせでできるペアをすべて集めた集合を、
と
の「直積」といい「

」と表します。 掛け算の記号と同じですが、意味は同じではありません。 例えば上の図では、
と
の直積で「

」になります。 また、

のことはしばしば「
」と表されます。


















同様に、この「

」と「
」の元のペアを集めた集合「



」は、無限に広がる3次元立体のイメージになります(図1-2)。










「



」のことはしばしば「
」と表されます。







同様に、4次元の「
」、5次元の「
」、…、とどこまでも考えることができます。 これらを一般化して「
」と表します。






また、これらの集合










の元のことを「点」といいます。 
の点は実数が
個で構成されますが、点を構成するそれらの実数「





」の組を「座標」といい、お馴染みの「







」で表します。 例えば、「






」は
の点の座標の一つです。

















































2距離
2.1ユークリッド距離とマンハッタン距離
さて、このような
の中に、点と点の「距離」を定めます。


わたしたちは日常的に図2-1の左側のようなものを「距離」と呼びますが、図の右側のように縦か横にしか移動できないものが2点間を最短で進むときの長さも、数学では「距離」として扱えます。

この図の左側のような、わたしたちが日常的に使う距離は「ユークリッド距離」といいます。 
の2点

に対して座標を

















とすると、
と
のユークリッド距離「




」は「






」で計算できます。 例えば、点





、点





のとき、
と
のユークリッド距離は「












」です。








































































































また
の場合のユークリッド距離は、点




、点




に対し、「














」となります。





























また、図の右側のような距離は「マンハッタン距離」といい、点







、点







に対し、「




















」で計算できます。








































2.2距離の定義
さて、ユークリッド距離もマンハッタン距離も数学では「距離」として扱えますが、他にどのようなものが距離として扱えるかといいますと、図2-2の条件を満たすものはすべて数学で「距離」といいます。
集合の
つの元を実数
に対応付ける写像「
」が以下を満たすとき、
を距離という。
の任意の元
に対し、
。
となるのは
のとき、またそのときに限る。
。
。
つまり、ユークリッド距離やマンハッタン距離はこの「距離の定義」を満たしているため、数学で「距離」として扱えるわけです。
2.3距離空間
このように数学では様々な距離を考えることができるため、
などの集合に対して、どのような距離を使うのかが重要になってきます。


そこで、集合と距離とをセットにし、「(集合,距離)」と表されるようになりました。 これを「距離空間」といいます。 「空間」とは、集合と何かしらのルール(距離など)をセットにしたものです。
例えば、ユークリッド距離「
」に対して、


























はそれぞれ距離空間です。 特にこれらの距離空間には名前が付けられており、それぞれ「1次元ユークリッド空間」、「2次元ユークリッド空間」、「3次元ユークリッド空間」、…、「n次元ユークリッド空間」と呼ばれます。





























ユークリッド距離はよく使われるため、単に
の集合が示されて距離が示されていないときには、暗黙的にn次元ユークリッド空間だとされることが多いです。


3点列の極限
3.1点列の収束
それではいよいよ、「







」を説明します。









まず、























































という写像「



」を考えます。 このとき、1次元ユークリッド空間「



」で考えると、
が大きくなるほど、


と
との距離「







」は小さくなります。 例えば、

のとき、











なので、





























のようにかなり小さいです(表3-1)。

































































































































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では、この距離







はどこまで小さくなりますでしょうか。 













としたとき、この
よりも小さくなりますでしょうか。 例えばこの場合、極端に



などとすると「









」となることは明らかです。
がさらに小さくなっても、
をさらに大きくすれば「









」となるでしょう。






















































このように、どんなに小さな(ただし
よりは大きい)
が指定されても、
を大きくすれば、
より大きいすべての自然数
に対し










とできるとき、「


は
に収束する」といい、「





」と表します(図3-1)。































先ほどの





























、という写像の例では、「


は
に収束する」つまり「





」になります。











































「









」の
を限りなく小さくできるということは、直観的には「
が限りなく大きくなるとき、


は
に限りなく近づく」と考えることもできます。


















また、この「





」という数式は、「
が限りなく大きくなるときに


が限りなく近づく値
」ということを表していますが、「


」自体と「
」とが等しくなるとは限りません。 実際、





























、といくら続けても、「




」になることはありません。 あくまで「限りなく近づく値」です。
























































ちなみに「





」という数に関して説明すると、





























、と続けたときに、


が収束する値が「





」と表現されています。 


は
に収束するため、これは
に等しい「







」です。
































































以上が「







」の解説です。









3.2点列の発散
さて、ついでに


が収束しない場合についても解説しておきましょう。
を限りなく大きくしても


がどの実数にも収束しないとき、


は「発散する」といいます。 発散には、「正の無限大に発散する」「負の無限大に発散する」「振動する」の3種類があります(図3-2)。














図のように、どんなに大きな実数
が指定されても、
を大きくすれば、
より大きい任意の自然数
に対し





とできるとき、


は「正の無限大に発散する」といい、「





」と表します。 直観的には、「
が限りなく大きくなるとき、


が限りなく大きくなること」と言えます。




























同様に図のように、どんなに小さな実数
が指定されても、
を大きくすれば、
より大きい任意の自然数
に対し





とできるとき、


は「負の無限大に発散する」といい、「






」と表します。 直観的には、「
が限りなく大きくなるとき、


が限りなく小さくなること」と言えます。





























これ以外の場合、


は「振動する」といいます。 収束せず、
や
への発散もしないということは、


は増減を繰り返しているに違いないため「振動」と表現されています。











以上のように、
を限りなく大きくしたときの


の向かう先を、


の「極限」といいます。 極限をまとめると、表3-2のようになります。









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数式での表現 |
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正の無限大に発散する | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
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負の無限大に発散する | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
それ以外 | 振動する | (なし) |
4冪
さて、最後にこの「極限」を使って、実数における「
(累乗)」の拡張を行っておきます。


累乗とは、「






」のように、
と
以上の整数
に対し「
を
回掛けた数」のことでした。 この
を「
」のように、任意の実数に拡張することを考えます。
















このように任意の実数

に対して拡張された「
」のことを、「冪」といいます。





4.1負の数の冪
まずは、「

」のような、負の数での冪を定義します。 図4-1のように、
の「
」が
減るごとに「
」は
倍されますので、
が負の数のときもその延長で「





」、「





」、…、と自然に定義できます。


























これを一般化して、「






」と定義します。 例えば、「











」です。





















4.2有理数の冪
次は、「
」のような、有理数の冪を定義します。


「




















」から分かる通り、一般に「








」という法則が成り立ちます。 ここで「



」を考えると、「













」となりますが、これは「
」を
回掛けた数が「
」になることを意味しますので、「
」の値は「
」といえます。 同様に、「


」「


」です。



































































これを一般化して、「




」と定義します。 「
」とは、以前説明した通り「
乗すると
になる負でない数」です。 例えば、「







」です。


















また、「

















」から分かる通り、一般に「








」という法則が成り立ちます。 よって「


」という有理数の冪を考えると、「



















」とすることで、これまでに説明した内容を使って計算できる形になりますので、あらゆる有理数
に対して「
」が計算できることが解ります。

























































4.3無理数の冪
それでは、「
」のような、無理数の冪を定義します。


以前説明した通り、「
」とは「









」と延々と続く無理数であるため「
」はここまでの冪の定義では計算できません。 そこで「




































」という、
の小数点以下第
桁目を切り捨てる写像を「


」としたときの、「



」の値を考えることにします。































































このとき、以前説明した通り「循環する小数は有理数である」ため、
の小数点以下第n桁目を切り捨てた「


」は有理数となり分数に直せ、任意の
に対して「



」が計算できることになります。











そこで、この
を限りなく大きくしたときに



が限りなく近づく実数を、「
」の値とみなすことにするわけです。 つまり、「







」と定義します。





































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限りなく大きい | 限りなく![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
これを一般化して、任意の無理数
に対し「
」は、
の小数点以下
桁目を切り捨てた数を


として「







」と定義します。


















以上により、(一部を除く)任意の実数

に対して「
」が定義できました。





4.40の0乗
ただし、以前説明した通り「
」は定義されないことがあります。 なぜなら、
































、と考えると


は
に収束しますが、
































、と考えると


は
に収束するため、近づき方によって
は1つに定まらないからです。


















































































また、「
」の値が実数にならない場合も「
」は定義できません。 例えば、「



」は「





」となりますが、「
」は実数ではないため定義しません。

















ここまでに説明したことを踏まえ、主な冪の法則まとめると、図4-2の通りになります。

今回は、距離空間、極限、冪について説明しました。 次回は、三角形や円などの様々な図形について解説します!