2023年12月23日に再調整したリマスター版です。
ファイル0-1: くいなちゃんフュージョン
以下の12曲、計40分がノンストップで繋がっています(図0-1)。
  1. 砂のお城とアイスクリーム [0:00]
  2. 朽ちた時計台 [3:32]
  3. 春を運ぶ風 [7:04]
  4. 輝く凍土世界 [10:34]
  5. 子供の縄張り [13:54]
  6. 獣たちは嵐を駆ける [17:16]
  7. ペンギンたちの願い [20:24]
  8. 大蛇 [24:03]
  9. シャボン玉のメヌエット [27:13]
  10. 夕暮れの火祭り [30:53]
  11. ノンアルコール・カクテル [34:09]
  12. 星くずの氾濫 [36:59]
図0-1: 曲名リスト
以下、各楽曲の解説です。

1砂のお城とアイスクリーム [0:00]

真夏の砂浜に吹いた一時のそよ風。 一番最初の楽曲なので、解りやすくキャッチーな曲調です。
ハ長調、4/4拍子、ソナタ形式。 提示部→展開部→再現部。 「フュージョン」のエッセンス。

1.1提示部 [0:00]



[0:00] この曲の提示部は、序奏→第一主題→推移→第二主題、という構成です。 まず華やかな序奏で始まります(図1-1)。
砂のお城とアイスクリーム(1)
図1-1: 砂のお城とアイスクリーム(1)
[0:14] 第一主題はシンコペーションを多用した軽快なフレーズで、砂浜で遊ぶ楽しさがイメージされています。 一般にソナタ形式では、第一主題は主調で軽快なフレーズ、第二主題は転調してゆったりとしたフレーズで奏でられ、主題の対比が描かれます(図1-2)。
砂のお城とアイスクリーム(2)
図1-2: 砂のお城とアイスクリーム(2)
[0:26] 推移部です。 ここで第二主題に移るための準備がされます。 さりげなくハ長調からロ長調へと転調しています。 印象付けるために、第一主題~推移部はもう一度繰り返されます(図1-3)。
砂のお城とアイスクリーム(3)
図1-3: 砂のお城とアイスクリーム(3)
[1:18] 広大な海辺をイメージした第二主題です。 4分音符でしっかりと刻まれたリズムに乗って、歌うようなメロディが奏でられます(図1-4)。
砂のお城とアイスクリーム(4)
図1-4: 砂のお城とアイスクリーム(4)

1.2展開部 [1:47]



[1:47] ソナタ形式の展開部は一般的に、第一主題や第二主題などを組み合わせて自由に奏でられます。 この曲では、展開部の前半は第一主題のようなシンコペーションのリズム、後半は第二主題のような4分音符で刻むリズムを用いながら即興的なフレーズが演奏されます(図1-5)。
砂のお城とアイスクリーム(5)
図1-5: 砂のお城とアイスクリーム(5)

1.3再現部 [2:45]



[2:45] 再現部では、提示部が再現されます。 ただし、提示部では第二主題が第一主題とは異なる調で奏でられるのに対し、再現部ではこれらは同じ調で奏でられるため、緊張が解決したような印象があります。

2朽ちた時計台 [3:32]

針が止まってなお、時が刻まれ続けます。
ニ短調、5/4拍子、ソナタ形式。 提示部→展開部→再現部。 「クラシック」のエッセンス。

2.1提示部 [3:32]



[3:38] 緊張感のある序奏で始まります。 5拍子になっているのは、時計の秒針がイメージされています(図2-1)。
朽ちた時計台(1)
図2-1: 朽ちた時計台(1)
[3:41] 第一主題です。 本来の調の音階にはない音を多用することで、不安な雰囲気が醸し出されています(図2-2)。
朽ちた時計台(2)
図2-2: 朽ちた時計台(2)
[3:54] 推移。 高音に偏ったフレーズで雰囲気を一変させ、第二主題を際立たせる効果を演出します(図2-3)。
朽ちた時計台(3)
図2-3: 朽ちた時計台(3)
[4:09] 第二主題です。 ここまでに見られた不協和音を無くして、情緒的で物悲しいメロディが奏でられます(図2-4)。
朽ちた時計台(4)
図2-4: 朽ちた時計台(4)

2.2展開部 [4:49]



[4:49] 主に第一主題を下地とした緊張感のあるフレーズが淡々と展開されます。

2.3再現部 [5:47]



[5:47] 提示部が再現されます。 第二主題は第一主題と同じ調で奏でられ、悲しい雰囲気のまま終わります。

3春を運ぶ風 [7:04]

春がやってきました。
ホ長調、4/4拍子、三部形式。 A→B→A。 「ボサ・ノヴァ」のエッセンス。

3.1A部 [7:04]



[7:04] 軽快で穏やかな序奏です(図3-1)。
春を運ぶ風(1)
図3-1: 春を運ぶ風(1)
[7:13] 疾走するような、軽やかなリズムで進行します。 春の訪れのイメージです(図3-2)。
春を運ぶ風(2)
図3-2: 春を運ぶ風(2)

3.2B部 [8:20]



[8:20] 転調し、歌うような旋律が自由に奏でられます(図3-3)。
春を運ぶ風(3)
図3-3: 春を運ぶ風(3)
[8:41] 転調を繰り返し、物悲しさを含みつつ盛り上がります(図3-4)。
春を運ぶ風(4)
図3-4: 春を運ぶ風(4)
[9:00] 元の調に戻ったのち、さらに自由な旋律が展開します。

3.3A部 [9:38]



[9:38] A部が再度奏でられます。 ソナタ形式に対して三部形式は、小規模かつシンプルで盛り上がりが穏やかな印象を受けるかもしれません。

4輝く凍土世界 [10:34]

月明かりに照らされて、銀色に輝く凍った世界。
ヘ短調、4/4拍子、自由形式。 「トランス」のエッセンス。
[10:34] 曲全体を通して重要となるフレーズで始まります。 以後、このフレーズが多用されます(図4-1)。
輝く凍土世界(1)
図4-1: 輝く凍土世界(1)
[10:44] 特徴的なリフが繰り返される、ミニマルな進行が続きます(図4-2)。
輝く凍土世界(2)
図4-2: 輝く凍土世界(2)
[11:11] 伴奏が一瞬止み、冒頭のフレーズが奏でられます。 そしてまたミニマルな進行が繰り返されます(図4-3)。
輝く凍土世界(3)
図4-3: 輝く凍土世界(3)
[11:51] 中間部です。 新しいテーマが用いられ、それまでのシンプルな進行に対して自由で美しいメロディが展開していきます(図4-4)。
輝く凍土世界(4)
図4-4: 輝く凍土世界(4)
[12:31] そのうち冒頭のフレーズが織り交ざり、盛り上がりを見せます(図4-5)。
輝く凍土世界(5)
図4-5: 輝く凍土世界(5)
[13:11] そしてミニマルな進行へと戻り、余韻を残したまま幕を閉じます。

5子供の縄張り [13:54]

自分勝手で自由気ままで、しかし愛らしく。
ト長調、4/4拍子、ソナタ形式。 提示部→展開部→再現部。 「ロックンロール」のエッセンス。

5.1提示部 [13:54]



[13:54] 特徴的な序奏(図5-1)。
子供の縄張り(1)
図5-1: 子供の縄張り(1)
[14:07] 第一主題。 全音で下降するコードと投げっぱなしのメロディで、自由奔放なイメージを表現しています(図5-2)。
子供の縄張り(2)
図5-2: 子供の縄張り(2)
[14:32] 第二主題。 怖れを知らない勇猛果敢さを表す、上昇を続けたのちに一気に駆け下りるようなフレーズです(図5-3)。
子供の縄張り(3)
図5-3: 子供の縄張り(3)

5.2展開部 [15:03]



[15:03] 第一主題と第二主題を組み合わせたフレーズで始まる展開部。 唯我独尊な提示部に比べて、ややしおらしい感じを出しています(図5-4)。
子供の縄張り(4)
図5-4: 子供の縄張り(4)

5.3再現部 [15:36]



[15:36] 提示部が再現されます。 次に激しい曲が待ち構えているため、曲と曲との繋ぎを長めにして焦らしています。

6獣たちは嵐を駆ける [17:16]

彼らは怖れを知らず、振り返ることなく。
イ短調、4/4拍子、ソナタ形式。 提示部→展開部→再現部。 「メロディック・スピード・メタル」のエッセンス。

6.1提示部 [17:16]



[17:17] ひたすら前向きな長いフレーズの第一主題です。 半音高くし、切ない鉄琴の響きを伴って主題が繰り返されます(図6-1)。
獣たちは嵐を駆ける(1)
図6-1: 獣たちは嵐を駆ける(1)
[18:07] 雄大な第二主題。 第一主題が16分音符を多用した細やかなフレーズだったのに対し、8分音符と4分音符から成るゆったりとしたメロディです(図6-2)。
獣たちは嵐を駆ける(2)
図6-2: 獣たちは嵐を駆ける(2)

6.2展開部 [18:35]



[18:35] 自由な展開部。 数小節ごとにコードが半音ずつ上昇し、緊迫した雰囲気を醸します。

6.3再現部 [19:22]



[19:22] 提示部の再現です。 最後はテンポを落としつつ終わります。

7ペンギンたちの願い [20:24]

ペンギンの覚束ない足取りをイメージした、変拍子の曲です。
ロ長調、変拍子、自由形式。 「変拍子」のエッセンス。
ここでは構成を便宜上、A→B→C→B→Aとしておきます。
[20:30] A部。 「8拍子→7拍子→6拍子→7拍子」を繰り返します。 メロディの背後での、木管楽器による上昇と下降の繰り返しが特徴的です(図7-1)。
ペンギンたちの願い(1)
図7-1: ペンギンたちの願い(1)
[21:05] A部の終わり部分。 やや前衛的なコード進行です(図7-2)。
ペンギンたちの願い(2)
図7-2: ペンギンたちの願い(2)
[21:17] B部。 空のように広大なメロディと変拍子のリズムが組み合わさっています(図7-3)。
ペンギンたちの願い(3)
図7-3: ペンギンたちの願い(3)
[21:40] C部は「ペンギンたちの願い」を描いた、7/8拍子で奏でられる自由なフレーズです。
[23:02] C部が終わったのち、B部、A部と遡るように奏でられます。

8大蛇 [24:03]

無調の音楽、つまり「ハ長調」や「ニ短調」などの調性の無い曲です。
無調、4/4拍子、ソナタ形式。 提示部→展開部→再現部。 「無調」のエッセンス。

8.1提示部 [24:03]



[24:03] 突発的な序奏(図8-1)。
大蛇(1)
図8-1: 大蛇(1)
[24:17] それぞれの音が調和しない、という点で全体が調和している第一主題。 細部を変えながら2回奏でられます(図8-2)。
大蛇(2)
図8-2: 大蛇(2)
[25:14] 不協和音ながらも歌うような第二主題。 微かな甘さが心地よく広がります(図8-3)。
大蛇(3)
図8-3: 大蛇(3)

8.2展開部 [25:31]



[25:31] 8分音符で刻まれるリズムの上に奏でられる、自由な展開部。 最後に唯一調和した響きで締めくくります。

8.3再現部 [26:10]



[26:10] 提示部の再現。 第一主題と第二主題の間にあった推移が取り除かれ、終わりに向って畳み掛けます。

9シャボン玉のメヌエット [27:13]

シャボン玉はふわふわと、まるでメヌエットを踊っているようでした。
変ホ長調、3/4拍子、ソナタ形式。 提示部→展開部→再現部。 「メヌエット」のエッセンス。

9.1提示部 [27:13]



[27:13] 第一主題。 3拍子のゆったりとした伴奏の上でリコーダーによるメロディが素朴に流れます(図9-1)。
シャボン玉のメヌエット(1)
図9-1: シャボン玉のメヌエット(1)
[27:54] 何かを訴えるような健気な推移部(図9-2)。
シャボン玉のメヌエット(2)
図9-2: シャボン玉のメヌエット(2)
[28:11] のびのびとした第二主題。 2回奏でられますが、メロディが頂上に達したときのコードが異なるため、1度目は切なく、2度目は温もりのある印象を与えます(図9-3)。
シャボン玉のメヌエット(3)
図9-3: シャボン玉のメヌエット(3)

9.2展開部 [28:43]



[28:43] 安らかで幻想的なフレーズの展開部です。 明るい提示部とは対照的に、日陰のような雰囲気で盛り上がりすぎることなく淡々と奏でられます(図9-4)。
シャボン玉のメヌエット(4)
図9-4: シャボン玉のメヌエット(4)

9.3再現部 [29:48]



[29:48] 提示部の再現です。 再び陽の当たる明るい情景が描かれます。

10夕暮れの火祭り [30:53]

高々と舞い上がる炎を囲んで、人々の儀式が始まります。
嬰ヘ短調、11/16拍子、ソナタ形式。 提示部→展開部→再現部。 「民族舞踊」のエッセンス。

10.1提示部 [30:53]



[31:00] 第一主題。 情熱的でドラマチックなリズムと旋律です。 2回奏でられます(図10-1)。
夕暮れの火祭り(1)
図10-1: 夕暮れの火祭り(1)
[31:43] 第二主題。 第一主題が短調だったのに対し、第二主題は長調で楽しく描かれます(図10-2)。
夕暮れの火祭り(2)
図10-2: 夕暮れの火祭り(2)

10.2展開部 [32:05]



[32:05] 展開部。 しばらくリズムを刻んだ後、第一主題と同様の出だしで始まる長いフレーズを一息で演奏します。

10.3再現部 [33:04]



[33:04] 提示部の再現。 第二主題の陽気な長調のまま次の曲への繋ぎを行います。

11ノンアルコール・カクテル [34:09]

レモン、オレンジ、パイナップルのジュースを同量ずつシェークしたら完成。
変イ長調、4/4拍子、ロンド形式。 A→B→A→C→A→B→A。 「スウィング・ジャズ」のエッセンス。

11.1A部 [34:09]



[34:09] 3連符のみで構成される、スイング感を伴ったフレーズ。 ややルーズな脱力したメロディです(図11-1)。
ノンアルコール・カクテル(1)
図11-1: ノンアルコール・カクテル(1)

11.2B部 [34:32]



[34:32] スキップをするようなリズムとやや洒落た響きの、背伸びをするようなフレーズ(図11-2)。
ノンアルコール・カクテル(2)
図11-2: ノンアルコール・カクテル(2)

11.3A部 [34:43]



[34:43] A部が再度奏でられます。

11.4C部 [34:54]



[34:54] メロディだけが3連符1つ分早く鳴る、前のめりになったようなフレーズ。 7度や9度の和音を多用した、甘ったるい響きのメロディが2回奏でられます(図11-3)。
ノンアルコール・カクテル(3)
図11-3: ノンアルコール・カクテル(3)
[35:37] 後半は即興的なフレーズが自由気ままに鳴り響きます。

11.5A部 [36:01]



[36:01] A部が再度奏でられます。

11.6B部 [36:24]



[36:24] B部が再度奏でられます。

11.7A部 [36:35]



[36:35] A部が再度奏でられます。

12星くずの氾濫 [36:59]

ふと見上げると、夜空一面に星くずが氾濫していました。
変ロ長調、4/4拍子、自由形式。 「ハッピー・ハードコア」のエッセンス。
[37:04] キラキラと輝くような切なくも明るいキャッチーなメロディが、軽快なリズムに乗って、転調しつつ2回奏でられます(図12-1)。
星くずの氾濫(1)
図12-1: 星くずの氾濫(1)
[37:46] 中間部は、ミニマルで解りやすいフレーズが何度も繰り返されます(図12-2)。
星くずの氾濫(2)
図12-2: 星くずの氾濫(2)
[38:49] そして最初のキャッチーなメロディが再現されたのち、ミニマルなフレーズでラストスパートをかけます。
[39:53] 最後には華々しく終わります(図12-3)。
星くずの氾濫(3)
図12-3: 星くずの氾濫(3)
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