Kuina-chan

くいなちゃん2018年12月11日


6さいからの数学」第8話では、図形の面積を求める「積分」について説明します!

1リーマン積分

第7話では「微分」を「接線の傾きを求める方法」と説明しましたが、これに対して今回解説する「積分」は「面積を求める方法」と言えます。
さて、まずは図1-1のような問題を考えてみましょう。
面積の問題
図1-1: 面積の問題
このような面積も、第7話で行った方法と同様に「極限」を使うことで求まります。

1.1リーマン和



この問題を解くにはまず、面積を求めたい領域を縦にいくつかの区間に分割します(図1-2)。
区間の分割
図1-2: 区間の分割
この例では、からの間をの3つの領域に区切りました。
次に、それぞれの区間の中で上の点を自由に選んで長方形を作ります(図1-3)。
リーマン和
図1-3: リーマン和
ちなみに、このように作った長方形の面積の合計を「リーマン」と呼びます。

1.2リーマン積分



ここで、からを使って3つの領域に分割していた区間を、さらにからの100個の領域のように細かく分割していくと、直感的にはこのリーマン和が本来求めたかった面積に近づいていくことが解ると思います(図1-4)。
リーマン積分
図1-4: リーマン積分
そして、区間をどのように分割しても、区間の分割数を限りなく大きくするとリーマン和が同じ値に収束するならば、この値を「リーマン積分せきぶん」といい、図形の面積と一致します。

1.3具体的な値



それでは具体的に先ほどの図形の面積の値を求めてみましょう。
先ほどリーマン積分の定義で「区間をどのように分割しても」と言いましたが、実際にあらゆる分割方法を検証することは困難ですので、「ダルブーの定理ていり」と呼ばれる定理が使われます。
この定理の一部を解りやすく言い換えると図1-5のようになります。

が有界(取りうる値が一定の範囲に収まっている)な関数で、のある分割に対して分割数を多くしたとき、リーマン和が最大になるときとリーマン和が最小になるときとで同じ値に収束するならば、この値はリーマン積分と一致する。

図1-5: ダルブーの定理の一部
要するに、この定理を使うと分割方法の1つを検証するだけでリーマン積分が可能となるわけです。
ここでは計算を簡単にするために、分割方法を等分割にしておきます。 先ほどの問題に対し、等分割したリーマン和が最大の場合と最小の場合を考えて、それぞれの極限を求めると図1-6のようになります。
最小と最大のリーマン和
図1-6: 最小と最大のリーマン和
最大の場合と最小の場合において、分割を大きくしていくとリーマン和は同じ値「」に近づくことが判ったため、ダルブーの定理より、この値はリーマン積分と一致します。 よって、求めたい面積の答えは「」です。

1.4シグマ



ちなみに、先ほどの計算式に現れた「」は「シグマ」と読み、意味は図1-7の通りです。
シグマ
図1-7: シグマ
先ほどの計算式では、長方形の面積を足し合わせるところでを使いました。

2不定積分と逆微分

さて、毎回このようにリーマン積分を求めるのは大変ですので、第7話の微分のときと同様に、主な関数についてリーマン積分した結果だけを紹介します。
先ほどはからの区間でリーマン積分を求めましたが、任意の区間で求まったほうが便利なため、変数に対し、からの区間に一般化したリーマン積分を求めることにします。
ちなみに、このように任意の区間に一般化して図形の面積が求まるようにすることを「不定積分ふていせきぶん」といい、と書きます。 これに対し、先ほどのからの区間のように、具体的な区間で図形の面積を求めることを「定積分ていせきぶん」といい、のように書きます。
という書き方は独特ですが、「」とはからの区間において足し合わせることを表し、「」とは微分のときにも現れましたが限りなく微小なを表します。 つまり「」とは、高さと幅を掛けて得られる細長い長方形の面積を、からの区間において足し合わせたものというニュアンスです。 先ほど計算した通り、です。
一方、不定積分とは、任意の区間「から」に対して「」が成り立つようなのことと定義されます。 つまり、このような関数が見つかれば、毎回リーマン和の極限を計算しなくてもで面積が求まるというわけです。
さっそくこの不定積分を見ていきましょう。

2.1不定積分



先ほどのの関数に対して不定積分を行うと、結論から言うと「」になります。 は任意の定数で、どのような数が代入されても成り立つというものです。
例えばこれをからの区間で計算すると、「」となり、確かに先ほどの結果と一致します。 不定積分を使って、を計算しただけです。
またからの区間の場合も、「」のようにリーマン和の極限を計算することなく簡単に求まります。

2.2逆微分



さてこの不定積分の関数はどうすれば求まるかについてですが、関数が連続している場合、実は微分の逆操作で求めることができます。 つまり、のとき、です。
例えばの不定積分を求めたい場合、微分してになる関数を探すと「」のため、「」が不定積分の結果となります。
つまり、関数が連続している場合、微分してになるような関数を見つけることが、を不定積分することになります。 このような関数を「原始関数げんしかんすう」といいます。

2.3主な関数の不定積分



主な関数の不定積分は表2-1の通りです。
表2-1: 主な関数の不定積分
関数 原始関数
これらの使い方としては、例えば定積分の「」を求めたい場合、不定積分の「」を使って、「」のように求まります。
これらの不定積分の結果はいずれも、微分すると元の関数に戻ります。 例えば一番上の「」を微分すると、となり、元の関数「」になります。

3広義リーマン積分

さて次に、リーマン積分ができない例として、図3-1の問題を考えてみましょう。
リーマン積分できない関数
図3-1: リーマン積分できない関数
この場合、区間が有限でないためリーマン和が作れず、リーマン積分ができません。
そこでどうするかというと、任意のからの区間で計算できる不定積分を使って、その区間を限りなく広げてリーマン積分を拡張することを考えます。 つまりこの問題は、と考えます。
こうすることで図3-2のように計算することができます。

を不定積分すると、なので、

広義リーマン積分より、

図3-2: 広義リーマン積分
よって答えは、「」になります。
このように、極限を使って拡張したリーマン積分を、「広義こうぎリーマン積分せきぶん」といいます。

4重積分

リーマン積分を多変数に拡張することで、立体の体積などを求めることもできます。
例えば、立体の方程式に対し、からからの区間の体積は、この区間をとしてと書きます。 これまでの方法と同様に、この立体に対して分割してリーマン和の極限を求めることで、この立体の体積が求まります。
このように、多変数に対して行う積分を「重積分じゅうせきぶん」と言います。
そして、積分する関数が有界(取りうる値が一定の範囲に収まっている)かつ、多変数のそれぞれの区間も有界のとき、この重積分は一変数の積分の組み合わせに直すことができます。 例えば、とできます。 あとは内側から計算すると体積が求まります。

5測度とルベーグ積分

さて、ここまでユークリッド空間の連続した図形に対して面積や体積を求めてきましたが、曲がった空間や不連続な図形を考えるとこれまでの方法では求まらないことがあります。 またさらに一般の集合を考えると、そもそも長さや面積の定義が自明ではないため、どのような長さに対しても面積が求まるようにしたほうが便利です。
そこで、長さや面積や体積を一般化して「測度そくど」というものを集合に定義し、その測度における積分を求める「ルベーグ積分せきぶん」というものが生まれました。
ルベーグ積分は、より多くのものに対して積分できるように、やや回りくどいですが図5-1の流れで行います。
  1. ルベーグ積分したい対象を含む集合に対し、そもそも測れるようにするためのルール「-代数」を導入する。
  2. この-代数の上に、実際の測り方を定義する。 この測り方を「測度」という。
  3. における-代数をとし、上の測度をとすると、これらをセットにしたを「測度空間そくどくうかん」という。
  4. 任意の測度空間上の関数に対し、「ルベーグ積分」を行う。
図5-1: ルベーグ積分の流れ
この(1)から(4)を図で表すと図5-2のようになります。
ルベーグ積分の流れの図
図5-2: ルベーグ積分の流れの図
このような流れにすることで、「測度空間」さえ作れば、どのようなものでも積分できるようになります。 例えば図形や立体に限らず、「確率」といったものも積分できます。 このため、現代の確率論はルベーグ積分をベースに構築されています。
ちなみにユークリッド空間を対象とする場合、今までわたしたちが面積や体積や長さとして考えていたものをそのまま自然に拡張した「ルベーグ測度そくど」という測度がよく使われます。 また、このときの-代数として「ボレル集合体しゅうごうたい」と呼ばれるものがよく使われます。
では、具体的にルベーグ積分の問題を解いてみましょう(図5-3)。
ルベーグ積分の問題
図5-3: ルベーグ積分の問題
あえて変な測り方をする必要はないため、ここでは2次元ユークリッド空間とし、ボレル集合体とルベーグ測度を使った測度空間を仮定します。
ざっくりというと、リーマン積分は図形を縦に分割して面積を求める方法でした。 これに対し、ルベーグ積分は横に分割して面積を求める方法と言えます。
一般的なルベーグ積分の定義はやや複雑ですが、関数の取り得る値が有限個かつ負でないとき、ルベーグ積分は図5-4のように定義されます。
値域が有限個かつ非負ときのルベーグ積分の定義
図5-4: 値域が有限個かつ非負ときのルベーグ積分の定義
要するに、ある数に対し、となるときのを集めてそのがどのくらいあるか(測度)を求め、とその測度を掛けたものが面積の一部になるという流れです。
この方法を先ほどの問題に適用して解くと、図5-5のようになります。
ルベーグ積分の問題の解答
図5-5: ルベーグ積分の問題の解答
この例では非常に簡単な面積を求めましたが、例えばすべての点で不連続な関数など、直感的には面積が分からない関数でもルベーグ積分を使えば求められる強みがあります。
今回は、図形の面積を求める「積分」について説明しました。 次回は、この積分の上に構築した「確率」と「統計」について解説します!
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