Kuina-chan

くいなちゃん2018年12月11日


6さいからの数学」第6話では、図形に関することを公理から考えていきます!

第5話では、実数を拡張して次元ユークリッド空間を定義しましたが、今回はこの上で様々な図形を扱っていきます。

1初等幾何学

まずは円や三角形などを扱うために、図形の公理について説明します。
図形に関する公理は「ヒルベルトの公理」と呼ばれるものが有名で、全部で20個あります。 多いですが、思い切ってすべてを網羅してしまうと図1-1の通りになります。

Ⅰ. 結合の公理

  1. 任意の異なる2点に対し、それらを含む直線が存在する。
  2. 任意の異なる2点に対し、それらを含む直線は複数存在しない。
  3. 任意の直線は2点以上を含む。 1直線上に無いような3点以上が存在する。
  4. 1直線上に無い任意の3点に対し、それらを含む平面が存在する。 任意の平面は1点以上を含む。
  5. 1直線上に無い任意の異なる3点に対し、それらを含む平面は複数存在しない。
  6. ある直線上の異なる2点がある平面上にあるならば、その直線上のすべての点はその平面上にある。
  7. 2平面がある点を共に含んでいるならば、その2平面はその点の他に1つ以上の点を共に含んでいる。
  8. 1平面上に無いような4点以上が存在する。

Ⅱ. 順序の公理

  1. が点と点の間にあるならば、の間にあり、これら3点を含む直線が存在する。
  2. と点が異なるとき、「の間にがある」とできるような直線上の点が存在する。
  3. 1直線上にある任意の異なる3点に対し、「他の2点の間にある」という点は複数存在しない。
  4. が1直線上に無く、それらのいずれの点も含まない直線が平面上にあるとき、もしその直線が線分上のある点を含むならば、線分もしくは線分上のある点を含む。

Ⅲ. 合同の公理

  1. 直線上に点があり、直線上に点があり、によって分断されたの片側が指定されているとき、「線分と線分は合同である」とできるような点が存在する。
  2. 線分が線分および線分と合同ならば、は合同である。
  3. 線分が1直線上にあって、点以外に共通の点を持たず、線分が1直線上にあって、点以外に共通の点を持たないとき、が合同かつが合同ならば、も合同である。
  4. が平面上にあり、直線が平面上にあり、によって分断されたの片側が指定され、上の点からに沿った半直線が出ているとき、「もしくはと合同である」とできるような半直線が、の指定された側にただ1つ存在する。
  5. 1直線上に無い点に対し、線分と線分が合同で、線分と線分が合同で、角と角が合同であるとき、角と角は合同である。

Ⅳ. 平行線の公理

  1. 任意の直線と、が含まない任意の点があるとき、を含む平面上に、を含んでと共通の点を含まない直線は複数存在しない。

Ⅴ. 連続性の公理

  1. 任意の線分に対し、どのような自然数が指定されても、点から出て点を含む半直線上に、と合同な個の線分を並べて作ることができる。
  2. 順序や合同の関係を維持したまま、直線に新たな点を含めて拡張することはできない。

定義

  • 異なる2点の組を線分といい、と表す。
  • 2点を通る直線上に点があり、の間にあるとき、は線分の上にあるという。
  • 平面上に直線と、上に無い2点があるとき、が等しいか線分とが共通の点を持たないならば、上でに対して同じ側にあるという。
  • 直線上に点と、と異なる2点があるとき、が等しいかが線分に含まれないならば、上でに対して同じ側にあるという。
  • 直線上に異なる2点があるとき、上でに対してと同じ側にある点全体を、から出てを含む半直線という。
  • 同じ点から出る2つの半直線の組を角といい、上の任意の点と、上の任意の点を用いて、と表す。
図1-1: ヒルベルトの公理
抽象的で解りにくいと思いますが、試しにこれらを使って図1-2の問題を証明してみましょう。
二等辺三角形の問題
図1-2: 二等辺三角形の問題
証明は図1-3のようになります。
  • が1直線上にあると三角形にならないので、点は1直線上に無いとする。
  • このときヒルベルトの公理Ⅲ-5より、とおくと、線分と線分が合同で、線分と線分が合同で、角と角が合同であるので、角と角は合同である。 従って、角と角は合同である。(証明終)
図1-3: 二等辺三角形の問題の証明
このようにヒルベルトの公理から図形の様々な性質を証明できますが、すべてをここから導き出すのは大変ですので、そこで以前にも説明した通り、その気になれば証明可能とした上で、本講座では既に証明された定理を紹介することにします。

2幾何学の主な定理

ここでは憶えるべき重要な定理に絞って紹介します。

2.1直線と角と三角形の性質



直線、角の基本的な性質は図2-1の通りです。
直線と角の性質
図2-1: 直線と角の性質
図のように、平行な2つの直線と交わる直線に対し、「対頂角たいちょうかく」「同位角どういかく」「錯角さっかく」はそれぞれ等しいです。
また、三角形の基本的な性質は図2-2の通りです。
三角形の性質
図2-2: 三角形の性質
三角形の内部の角を「内角ないかく」といい、線分を延長してできる外部の角を「外角がいかく」といいます。
このとき、3つの内角の和は2つの直角の和に等しくなります。
また、外角はそれに隣り合わない2つの内角の和に等しくなります。 例えばの外角は、の内角との内角を足したものに等しいです。

2.2円の性質



えん」はヒルベルトの公理では直接定義されていませんが、図2-3のように定義することができます。

平面上に異なる2点があるとき、「点から出て線分と合同」となるような上のすべての線分に対し、点をすべて集めたものを円という。

図2-3: 円の定義
またこのとき、点を円の「中心ちゅうしん」といい、線分の長さを円の「半径はんけい」といいます。 円のことを「円周えんしゅう」と呼ぶこともあります。
ヒルベルトの公理からどのように円の定理が導けるかは想像しにくいですが、例えば公理Ⅴ-2を用いると、「線分において、点が円の内部にあり、点の外部にあるとき、と交わる」などの定理が証明できます。
円の基本的な性質は図2-4の通りです。
円周角と中心角の関係
図2-4: 円周角と中心角の関係
図のように、円周上の異なる2点によって切り取られた円の一部を「」といいます。
弧の2点と、弧の上に無い点とが作る角を「円周角えんしゅうかく」といいます。 弧の2点と、円の中心とが作る角を「中心角ちゅうしんかく」といいます。 このとき、同じ弧に対する円周角はどれも等しく、また中心角は円周角の倍に等しくなります。
接弦定理
図2-5: 接弦定理
また図2-5のような、円の接線が作る角の大きさは、「接弦定理せつげんていり」と呼ばれる定理で求まります。 円周上の異なる2点が作る直線と、を通る円の接線があったとき、接線上の点と線分とが作る角は、直線に対しと同じ側にある弧の円周角に等しくなります。

2.3三角形の合同条件と相似条件



さて、2つの三角形において、対応する辺の長さと角の大きさがそれぞれ等しいとき、これらの三角形は「合同ごうどう」であるといいます。 言い換えると「合同」とは、2つの図形を移動・回転・反転させると形がぴったり重なることともいえます。 2つの三角形が合同であるための条件は、図2-6の通りです。

2つの三角形が以下のいずれかを満たすとき、これらは合同である。

  1. 「3辺が等しい。」 つまりが合同である。
  2. 「2辺とその間の角が等しい。」 つまりが合同である。
  3. 「1辺とその両端の角が等しい。」 つまりが合同である。
図2-6: 三角形の合同条件
また、2つの三角形において、対応する辺の長さの比と角の大きさがそれぞれ等しいとき、これらの三角形は「相似そうじ」といいます。 「合同」がぴったり重なることだとすると、「相似」は拡大縮小するとぴったり重なることだといえます。 2つの三角形が相似であるための条件は、図2-7の通りです。

2つの三角形が以下のいずれかを満たすとき、これらは相似である。

  1. 「3辺の比が等しい。」 つまりである。
  2. 「2辺の比が等しく、その間の角が等しい。」 つまり、かつが合同である。
  3. 「2つの角が等しい。」 つまりが合同である。
図2-7: 三角形の相似条件

2.4図形の面積



図形の「面積めんせき」はヒルベルトの公理では直接定義されていませんが、三角形の面積を図2-8のようにおなじみの方法で定義することで、あらゆる図形の面積を相対的に考えることができます。

三角形において、点を通る直線が上の点で直角に交わるとき、線分の長さを「高さ」と呼び、線分の長さを「底辺」と呼ぶ。 このとき、三角形の面積を「底辺高さ」と定義する。

図2-8: 三角形の面積
例えば多角形の面積は、三角形に分割してそれぞれの面積を足し合わせることで求まります。
円の面積は、円に内接する角形と外接する角形の面積を考え、を限りなく大きくしたときにこの2つの面積が同じ値に収束することを利用して求まります(図2-9)。
円の面積
図2-9: 円の面積
「内接する角形の面積円の面積外接する角形の面積」という関係が常に成り立っているため、この2つの角形の面積がある数に収束するならば、前回解説した極限の定義より、これらに挟まれた円の面積もその数に収束するといえます。
この方法のように、自然数に対して常にであるような写像において、の極限が等しいならばの極限も等しくなることを「はさみうちの原理げんり」といいます。 この定理は、直接極限が求まらないものを求めるときに役立ちます。
これを実際に計算すると、円の面積は「半径半径」で求まることが分かり、の値は「」という無理数になります。 は「パイ」と読み、この値は「円周率えんしゅうりつ」と呼ばれます。

2.5ピタゴラスの定理



そのほか、図形に関する重要な定理として、「ピタゴラスの定理ていり」があります。 これは、直角三角形の斜辺の長さを、それ以外の2辺の長さをとしたとき、「」が成り立つというものです(図2-10)。
ピタゴラスの定理
図2-10: ピタゴラスの定理

3非ユークリッド幾何学

ここまでは、無限に広がる平面の上に三角形や円を描いたりするような、わたしたちに馴染み深い幾何学を考えてきましたが、数学的にはそれ以外の幾何学を考えることもできます。 例えば、球や曲面の表面に図形を描いた場合の幾何学です。
ヒルベルトの公理Ⅳ-1は「平行線の公理」と呼ばれますが、この公理を削除するとわたしたちに馴染み深い図形の体系とは異なる体系が生まれます。 わたしたちに馴染み深い体系では三角形の内角の和は2直角(2つの直角の和)と等しいですが、平行線の公理を削除した体系では2直角よりも小さくなることがあります。
平行線の公理を認めたわたしたちに馴染み深い体系は「ユークリッド幾何学きかがく」と呼ばれ、平行線の公理を削除した体系は「ユークリッド幾何学きかがく」と呼ばれます。
また、平行線の公理以外の公理をいくつか削除することで、三角形の内角の和が2直角よりも大きくなる体系を作ることもできます。 この体系も、非ユークリッド幾何学に含められます。
「ユークリッド幾何学」と「非ユークリッド幾何学」をひとまとめにして、「多様体たようたい」と呼ばれる立体に一般化して扱われることも多いです。

4解析幾何学

それでは最後に、「n次元ユークリッド空間」の中で図形を扱うことを考えます。
前回、の元を「点」と言うと説明しましたが、この「点」をそのままヒルベルトの公理における点とみなし、直線や平面などを「点の集合」だと考えることで、ヒルベルトの公理を満たすような体系がに構築できます。 つまり、に定義されていた「座標」や「ユークリッド距離」といった概念がヒルベルトの公理の図形に対して適用できます。
例えば、ある図形がの点で構成されていた場合、それらの点はそれぞれの座標を持ちますので、その図形はという方程式によって表せることになります。 例えば、という方程式は、上の一つの直線になります。
における直線や円の方程式を図4-1にまとめました。
図形の方程式
図4-1: 図形の方程式
2点を通る直線の方程式は、「」と表せます。
中心、半径の円の方程式は、「」と表せます。
図形を方程式で扱えるようになったことで、例えば「直線と円が2点で交わっているときの線分の長さ」のような、ヒルベルトの公理からは導けないものが計算できるようになります。

5いろいろな図形

図形が方程式で扱えるようになったということは、逆に方程式で表されるものを新たな図形として考えることもできます。 ここでは色々な「関数」の方程式が作り出す図形について紹介します。
関数かんすう」とは基本的には写像と同じもので、2つの集合の元を対応付けるものです。 ただし、1つの元に対応付けられる元が複数だったり、存在しなかったりするものも関数として許可されることがあります。

5.1指数関数



かつであるような実数に対し、「」と定義される関数を、「指数関数しすうかんすう」といいます。 また、このときのを指数関数の「てい」といいます。
例えば、指数関数が作り出す図形として「」と「」という方程式を考えると図5-1のようになります。
指数関数が作る図形
図5-1: 指数関数が作る図形

5.2対数関数



かつであるような実数および、である実数に対し、を満たす実数を、「ろぐ」と表します。 例えば、「」ですので、「」です。 言い換えると「」とは、「を何乗するとになるか」という数を表します。
このとき、である実数に対し、「」と定義される関数を、「対数関数たいすうかんすう」といいます。 また、このときのを対数関数の「てい」といいます。
例えば、対数関数が作り出す図形として「」と「」という方程式を考えると図5-2のようになります。
対数関数が作る図形
図5-2: 対数関数が作る図形

5.3三角関数



このほか図形に関する重要な概念として「三角関数」があります。
さて、「三角関数さんかくかんすう」とは、図5-3のように定義される3つの関数「さいん」「こさいん」「たんじぇんと」のことを指します。
三角関数
図5-3: 三角関数
図の左側のように、半径1の円周上の点と、円の中心とを結ぶ線分の角度をとすると、点の座標は「」と定義されます。
また図の右側のように、円の中心から発して点を通る線分をまで伸ばしたときの座標は、「」と定義されます。 ただしの場合など、いくら線分を伸ばしてもに交わらないときはの値は定義されません。 ちなみに「」の関係が成り立ちます。
ところで、角の大きさは、1周を「」とする「度数法どすうほう」に馴染みがありますが、数学では1周を「らじあん」とする「弧度法こどほう」がよく使われます。 「」は弧度法の単位で、しばしば表記からは省略されます。 例えば「」のことは単に「」と書かれます(図5-4)。
度数法と弧度法
図5-4: 度数法と弧度法
」ですから、「」「」「」「」「」などとなります。
さて、が具体的にどのような数になるかといいますと、ほとんどは極限を計算しないと求まらないような複雑な数ですが、いくつかの値は分数や平方根で表すことができます。 例えば先ほどのの定義から、表5-1の値が導けます。
表5-1: sinとcosの値
の値 の値
また、のときも、辺の長さの比が「」や「」となるおなじみの直角三角形を考えることで、の値が導けます(図5-5)。
三角関数の性質
図5-5: 三角関数の性質
これらのの値は頻繁に使いますので、多くの人は暗記しています。
最後に、三角関数が作り出す図形「」「」「」という方程式を考えると図5-6のようになります。
三角関数が作る図形
図5-6: 三角関数が作る図形
角度はで1周するため、に対してごとに同じ形が繰り返されます。
今回は、ヒルベルトの公理から導かれる図形の性質や、それを次元ユークリッド空間で扱う方法について説明しました。 次回は、これらの図形の接線の傾きを求める「微分」について解説します!
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