Kuina-chan

くいなちゃん2018年12月11日


6さいからの数学」第5話では、0.9999...=1であることや、累乗を実数に拡張した「2√2」などについて解説します!

を説明する前に、第4話で説明した実数を拡張して、平面や立体が扱えるようにします。

1直積

を、からまで続く数直線だとイメージすると、の2つの元のペアを集めた集合は、無限に広がる2次元平面のイメージになります(図1-1)。
2次元平面
図1-1: 2次元平面
このように、2つの集合の元の組み合わせでできるペアをすべて集めた集合を、の「直積ちょくせき」といい「」と表します。 例えば上の図では、の直積で「」になります。 また、のことはしばしば「」と表されます。
同様に、この「」と「」の元のペアを集めた集合「」は、無限に広がる3次元立体のイメージになります(図1-2)。
3次元立体
図1-2: 3次元立体
」のことはしばしば「」と表されます。
同様に、4次元の「」、5次元の「」、…、とどこまでも考えることができます。 これらを一般化して「」と表します。
また、これらの集合の元のことを「てん」といいます。 の点が実数2つのペアで構成されたように、の点は実数が個で構成されますが、点を構成するそれらの実数「」の組を「座標ざひょう」といい、お馴染みの「」で表します。 例えば、「」はの点の座標の一つです。
という数は、この1次元のにある一つの点といえます。

2距離

2.1ユークリッド距離とマンハッタン距離



さて、このようなの中に、点と点の「距離きょり」を定めます。
わたしたちは日常的に図2-1の左側のようなものを「距離」と呼びますが、図の右側のように縦か横にしか移動できないものが2点間を最短で進むときの長さも、数学では「距離」として扱えます。
距離
図2-1: 距離
この図の左側のような、わたしたちが日常的に使う距離は「ユークリッド距離きょり」といいます。 の2点に対して座標をとすると、のユークリッド距離「」は「」で計算できます。 例えば、点、点のとき、のユークリッド距離は「」です。
の場合のユークリッド距離は、点、点に対し、「」で計算できます。
またの場合のユークリッド距離は、点、点に対し、「」となります。
また、図の右側のような距離は「マンハッタン距離きょり」といい、点、点に対し、「」で計算できます。

2.2距離の定義



さて、ユークリッド距離もマンハッタン距離も数学では「距離」として扱えますが、他にどのようなものが距離として扱えるかといいますと、図2-2の条件を満たすものはすべて数学で「距離」といいます。

集合つの元を実数に対応付ける写像「」が以下を満たすとき、を距離という。

の任意の元に対し、

  1. となるのはのとき、またそのときに限る。
図2-2: 距離の定義
つまり、ユークリッド距離やマンハッタン距離はこの「距離の定義」を満たしているため、数学で「距離」として扱えるわけです。

2.3距離空間



このように数学では様々な距離を考えることができるため、などの集合に対して、どのような距離を使うのかが重要になってきます。
そこで、集合と距離とをセットにし、「(集合,距離)」と表されるようになりました。 これを「距離空間きょりくうかん」といいます。 「空間くうかん」とは、集合と何かしらのルール(距離など)をセットにしたものです。
例えば、ユークリッド距離「」に対して、はそれぞれ距離空間です。 特にこれらの距離空間には名前が付けられており、それぞれ「1次元ユークリッド空間」、「2次元ユークリッド空間」、「3次元ユークリッド空間」、…、「n次元ユークリッド空間」と呼ばれます。
ユークリッド距離はよく使われるため、単にの集合が示されて距離が示されていないときには、暗黙的にn次元ユークリッド空間だとされることが多いです。

3点列の極限

3.1点列の収束



それではいよいよ、「」を説明します。
まず、という写像「」を考えます。 このとき、1次元ユークリッド空間「」で考えると、が大きくなるほど、との距離「」は小さくなります。 例えば、のとき、なので、のようにかなり小さいです(表3-1)。
表3-1: d(f(n),1)の値
では、このはどこまで小さくなりますでしょうか。 としたとき、このよりも小さくなりますでしょうか。 例えばこの場合、極端になどとすると「」となることは明らかです。 がさらに小さくなっても、をさらに大きくすれば「」となるでしょう。
このように、どんなに小さな(ただしよりは大きい)が指定されても、を大きくすれば、より大きいすべての自然数に対しとできるとき、「収束しゅうそくする」といい、「」と表します(図3-1)。
f(n)の収束
図3-1: f(n)の収束
先ほどの、という写像の例では、「に収束する」つまり「」になります。
」のを限りなく小さくできるということは、直観的には「が限りなく大きくなるとき、に限りなく近づく」と考えることもできます。
また、「」という数式は、「が限りなく大きくなるときにが限りなく近づく値」ということを表していますが、「」自体と「」とが等しくなるとは限りません。 実際、、といくら続けても、「」になることはありません。
ちなみに「」という数に関して説明すると、、と続けたときに、が収束する値が「」と定義されています。 に収束するため、これはに等しい「」です。
以上が「」の解説です。

3.2点列の発散



さて、ついでにが収束しない場合についても解説しておきましょう。 を限りなく大きくしてもがどの実数にも収束しないとき、は「発散はっさんする」といいます。 発散には、「正の無限大に発散する」「負の無限大に発散する」「振動する」の3種類があります(図3-2)。
f(n)の発散
図3-2: f(n)の発散
図のように、どんなに大きな実数が指定されても、を大きくすれば、より大きい任意の自然数に対しとできるとき、は「せい無限大むげんだい発散はっさんする」といい、「」と表します。 直観的には、「が限りなく大きくなるとき、が限りなく大きくなること」と言えます。
同様に図のように、どんなに小さな実数が指定されても、を大きくすれば、より大きい任意の自然数に対しとできるとき、は「無限大むげんだい発散はっさんする」といい、「」と表します。 直観的には、「が限りなく大きくなるとき、が限りなく小さくなること」と言えます。
これ以外の場合、は「振動しんどうする」といいます。 収束せず、への発散もしないということは、は増減を繰り返しているに違いないため「振動」と表現されています。
以上のように、を限りなく大きくしたときのの向かう先を、の「極限きょくげん」といいます。 極限をまとめると、表3-2のようになります。
表3-2: 極限
が限りなく大きくなるとき の極限 数式での表現
はaに限りなく近づく に収束する
は限りなく大きくなる 正の無限大に発散する
は限りなく小さくなる 負の無限大に発散する
それ以外 振動する (なし)

4

さて、最後にこの「極限」を使って、実数における「(累乗)」の拡張を行っておきます。
累乗とは、「」のように、以上の整数に対し「回掛けた数」のことでした。 このを「」のように、任意の実数に拡張することを考えます。
このように任意の実数に対して拡張された「」のことを、「べき」といいます。

4.1負の数の冪



まずは、「」のような、負の数での冪を定義します。 図4-1のように、の「」が減るごとに「」は倍されますので、が負の数のときもその延長で「」、「」、…、と自然に定義できます。
負の数の冪
図4-1: 負の数の冪
これを一般化して、「」と定義します。 例えば、「」です。

4.2有理数の冪



次は、「」のような、有理数の冪を定義します。
」から分かる通り、一般に「」という法則が成り立ちます。 ここで「」を考えると、「」となりますが、これは「」を回掛けた数が「」になることを意味しますので、「」の値は「」といえます。 同様に、「」「」です。
これを一般化して、「」と定義します。 「」とは、以前説明した通り「乗するとになる数」です。 例えば、「」です。
また、「」から分かる通り、一般に「」という法則が成り立ちます。 よって「」という有理数の冪を考えると、「」とすることで、これまでに説明した内容を使って計算できる形になりますので、あらゆる有理数に対して「」が計算できることが解ります。

4.3無理数の冪



それでは、「」のような、無理数の冪を定義します。
以前説明した通り、「」とは「」と延々と続く無理数であるため「」はそのままでは計算できません。 そこで「」という、の小数点以下第桁目を切り捨てる写像を「」としたときの、「」の値を考えることにします。
このとき、以前説明した通り「循環する小数は有理数である」ため、の小数点以下第n桁目を切り捨てた「」は有理数となり分数に直せ、任意のに対して「」が計算できることになります。
そこで、このを限りなく大きくしたときにが限りなく近づく実数を、「」の値とみなすことにするわけです。 つまり、「」と定義します。
を大きくしていくと、表4-1のように「」となることが解ります。
表4-1: 無理数の冪の計算
限りなく大きい 限りなくに近づく
これを一般化して、任意の無理数に対し「」は、の小数点以下桁目を切り捨てた数をとして「」と定義します。
以上により、(一部を除く)任意の実数に対して「」が定義できました。

4.40の0乗



ただし、以前説明した通り「」は定義されないことがあります。 なぜなら、、と考えるとに収束しますが、、と考えるとに収束するため、近づき方によっては1つに定まらないからです。
また、「」の値が実数にならない場合も「」は定義できません。 例えば、「」は「」となりますが、「」は実数ではないため定義しません。
ここまでに説明したことを踏まえ、主な冪の法則まとめると、図4-2の通りになります。
主な冪の法則
図4-2: 主な冪の法則
今回は、距離空間、極限、冪について説明しました。 次回は、三角形や円などの様々な図形について解説します!
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