Kuina-chan

くいなちゃん2018年12月11日


6さいからの数学」第3話では、整数とその性質を解説します!

第2話では、集合と自然数と加算の公理を使って「」を証明しました。 しかし、これらの公理を持ち出さなくてもわたしたちは「」であることを確信しています。 そこで、前回のような方法で「」や「」などを証明していくことはやめ、その気になればこれらも証明可能であるとした上で、今後は「本当に成り立つかどうか判らないこと」に焦点を当てて進めることにします。

1整数

第2話で、自然数を「」という集合で表しましたが、これらにマイナスを付けた数を含めたものを「整数せいすう」といいます。 つまり整数全体の集合をとすると、「」となります。
より大きい数を「せい」の数といい、より小さい数を「」の数といいます。
どのような2つの整数に対しても、加算「」や減算「」や乗算「」が行えることはご存知の通りです。 「」は「」と書かれたり、しばしば乗算の記号が省略されて「」と書かれます。

1.1累乗



整数と、以上の整数に対し、「」と表された演算を「累乗るいじょう」といいます。 このとき「」とは「回掛けた数」を意味し、例えば「」は「」、つまりです。
また、でない任意の数に対し、「」とします。 例えば「」です。 「」は、「」と定義されることもありますが、様々な理由から定義しないことも多いです。

1.2絶対値



整数からどれだけ離れているかを、の「絶対値ぜったいち」といい、「」と表します。 のときは「」、のときは「」と計算できます。 例えばの絶対値は「」、の絶対値は「」です。

1.3整数を学ぶ意義



物理学などの自然科学では、整数よりも実数を扱うことが多いため、学校教育では整数が深く取り上げられることは少ないのが現状です。
しかし整数にはパズルのような面白さと奇妙さがあるため、数学の大会や未解決問題には整数に関するものが多く現れます。 またコンピュータ上では整数は基本的な要素になるため、素数の定理が暗号に応用されるなど、部分的に活用されています。
その面白さに触れていただくため、今回は整数の基本的な性質を説明したのちに、最後にそれらを応用した具体的な問題を解いてみることにします。

2整数の性質

ここからは、整数の様々な性質について解説します。

2.1商と余り



2つの整数の除算()は、その値が整数にならないことがあります。 そこで、計算結果が整数になる「しょう」と「あまり」というものを定義します。
」をしたとき、「商」とは、個のものを人に配ったときの1人あたりの個数に当たります。 「余り」は、配りきれずに残った個数です。 例えば、「」の商は、余りはです。
これを厳密に数式で定義すると、「」をしたときの商と余りとは、それぞれ「 」を満たす整数になります。 「」の例では、を入れると「 」になり、この数式を満たしていることが解ります。

2.2割り切る、約数、倍数



」の余りがであれば、「る」といいます。 例えば「」は余りがなので、を割り切ります。
を割り切るとき、の「約数やくすう」といい、またの「倍数ばいすう」といいます。 を割り切るため、の約数、の倍数です。

2.3公約数、公倍数



を割り切り、を割り切るとき、整数を、の「公約数こうやくすう」といいます。 例えば、を割り切り、を割り切るので、の公約数です。
を割り切り、を割り切るとき、整数を、の「公倍数こうばいすう」といいます。 例えば、を割り切り、を割り切るので、の公倍数です。
の公約数のうち最大のものを、の「最大公約数さいだいこうやくすう」といい、「」と表します。 の正の公倍数のうち最小のものを、の「最小公倍数さいしょうこうばいすう」といい、「」と表します。

2.4最大公約数と最小公倍数の求め方



最大公約数を求めるには、図2-1に示した「ユークリッドの互除法ごじょほう」という方法が便利です。
  1. 2つの整数のうち、小さいほうを、大きいほうをとおく。
  2. をしたときの余りをとおく。
  3. このときであれば、の最大公約数は、の最大公約数に等しい。 よって、の最大公約数を求めることにして(1)に戻る。
  4. このときであれば、の最大公約数は、である(計算終了)。
図2-1: ユークリッドの互除法
例えばの最大公約数をユークリッドの互除法で求めた結果は、図2-2の通りです。
  • のうち、小さいほうは、大きいほうはなので、とおく。
  • 、つまりの余りはなので、より、
  • 同様に、として繰り返すと、
  • ここで、の余りはなので、より、
  • よって、
図2-2: 128と80の最大公約数
また、最小公倍数は「」で求まります。 例えばの最小公倍数は、となり、です。

2.5互いに素



2つの整数が、以外に公約数を持たないとき、すなわちのとき、は「たがいに」であるといいます。 例えばなので、は互いに素です。

3素数

正の約数がだけである、以上の整数のことを、「素数そすう」といいます。 言い換えると素数とは、以上の整数のうち、と自分自身以外の正の整数では割り切れない数のことです。 素数でない以上の整数を「合成数ごうせいすう」といいます。
素数を小さい順に並べると「」と続いていきます。 「」が素数に含まれていないのは、と自分自身以外である「」で割り切れるためです。
素数は、「エラトステネスのふるい」という方法で得ることができます。 これは「以上の整数のうち、どの素数の倍数でもないものは素数である」ことを利用した方法で、図3-1のように行います。
エラトステネスの篩
図3-1: エラトステネスの篩

3.1素因数分解



すべての正の整数は、素数の積(掛け算)で表すことができます。 例えば累乗を使うと、「」「」「」「」「」「」のように表せます。 このように正の整数を素数の積で表すことを、「素因数分解そいんすうぶんかい」といいます。
どの正の整数も必ず素因数分解することができ、そのパターンは(積の順序を無視すれば)1通りに限られます。 この性質は「素因数分解そいんすうぶんかい一意性いちいせい」と呼ばれ、他の定理を証明するのにとても役立ちます。
素数に「」を含めない理由は、を素数に含めると、「」のように素因数分解の一意性が成り立たなくなるためです。

4不定方程式

さて、それでは最後に、今までに紹介した整数の性質を応用した具体的な問題に挑戦してみましょう。 「不定方程式ふていほうていしき」と呼ばれる問題です。
方程式ほうていしき」とは、「を満たすを求めよ」のような、等式を成立させる変数の値を求める問題のことです。 このとき、等式が成立するような変数の値のことを、方程式の「かい」といいます。
方程式のうち「不定方程式」とは、方程式の解が無数にあるものを指します。 例えば「を満たすの組み合わせを求めよ」のようなものです。 この場合、「」や「」などが解となります。
このように不定方程式では方程式の解が無数にありますが、大抵は、条件を付けることで解の個数を有限個にして出題されます。 その条件をいかに利用して解くかというところに、パズルのような面白さがあります。

4.1問題



それでは不定方程式の具体的な問題として、図4-1に挑戦しましょう。

[問題] ある桁の整数を、のように逆順にしたとき、もとの数倍になった。 の値を求めよ。

図4-1: 不定方程式の問題

4.2解法



まずは、不定方程式を組み立てます。 桁の整数を上の桁から1桁ずつと置くと(例えばの場合は)、逆順にしたときに元の数の倍になることから図4-2の方程式が出来上がります。

図4-2: 不定方程式
このままではこの式は4つの変数を含んだ不定方程式で解が無数に存在しますので、様々な条件を利用して解を絞り込んでいきます。

4.3aの値を求める



まずの場合は桁以下になってしまうので、であるといえます。 また、の場合は倍すると桁以上になってしまうため、といえます。 つまり、のどちらかとなります。
ここで仮にだとすると、方程式は「」となり、右辺の一の位が「」になっています。 倍して一の位がになる整数はありませんので、の場合に解は存在しないことが判ります。 よって、解が存在するとしたらの場合のみとなります。

4.4dの値を求める



を代入すると、方程式は「」になります。 ここで右辺の一の位は「」ですが、倍して一の位がになる整数の一の位は、「」「」しかありませんので、よって左辺の一の位であるは、となります。
ここでだとすると、方程式は「」になりますが、この式を整理すると「」になり、のどの値を入れてもは負の数になるため、であることが判ります。 よって、解が存在するとしたらの場合のみとなります。

4.5bとcの値を求める



を代入すると、方程式は「」になり、これを整理すると「」となります。 ここで「」が整数になるためには、とする必要があり、それ以外はありえません。
を、に代入して、より、です。
よって、より、です。 より、倍すると確かにもとの数の逆順になることが解ります。
今回は、整数の基本的な性質を紹介し、具体的な問題に挑戦してみました。 次回は、小数を含めたいろいろな数について解説します!
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