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Kuina-chan

くいなちゃんAug 22, 2017


6さいからの数学」第5話では、0.9999…=1であることや、累乗を実数に拡張した「2√2」などについて解説します!

0.9999…=1を説明する前に、第4話で説明した実数ℝを拡張して、平面や立体が扱えるようにします。

直積

ℝを、-∞から+∞まで続く数直線だとイメージすると、ℝの2つの元のペアを集めた集合は、無限に広がる2次元平面のイメージになります(ℝ×ℝ)。
ℝ×ℝ
ℝ×ℝ
このように、2つの集合A、Bの元の組み合わせでできるペアをすべて集めた集合を、AとBの「直積ちょくせき」といい「A×B」と表します。 例えば上の図では、ℝとℝの直積で「ℝ×ℝ」になります。 また、ℝ×ℝのことはしばしば「ℝ2」と表されます。
同様に、この「ℝ×ℝ」と「ℝ」の元のペアを集めた集合「ℝ×ℝ×ℝ」は、無限に広がる3次元立体のイメージになります(ℝ×ℝ×ℝ)。
ℝ×ℝ×ℝ
ℝ×ℝ×ℝ
「ℝ×ℝ×ℝ」のことはしばしば「ℝ3」と表されます。
同様に、4次元の「ℝ4」、5次元の「ℝ5」、…、とどこまでも考えることができます。 これらを一般化して「ℝn」と表します。
また、これらの集合ℝ、ℝ2、ℝ3、…、ℝnの元のことを「てん」といいます。 ℝ2の点が実数2つのペアで構成されたように、ℝnの点は実数n個で構成されますが、点を構成するそれらの実数「x、y、z、…」の組を「座標ざひょう」といい、お馴染みの「(x,y,z,…)」で表します。 例えば、「(3,5,-2)」はℝ3の点の座標の一つです。
0.9999…という数は、この1次元のℝにある一つの点といえます。

距離

ユークリッド距離とマンハッタン距離

さて、このようなℝnの中に、点と点の「距離きょり」を定めます。
わたしたちは日常的に距離の左側のようなものを「距離」と呼びますが、図の右側のように縦か横にしか移動できないものが2点間を最短で進むときの長さも、数学では「距離」として扱えます。
距離
距離
この図の左側のような、わたしたちが日常的に使う距離は「ユークリッド距離きょり」といいます。 ℝ2の2点a、bに対して座標をa=(ax,ay)、b=(bx,by)とすると、aとbのユークリッド距離「d(a,b)」は「d(a,b)=√((ax-bx)2+(ay-by)2)」で計算できます。 例えば、点a=(0,0)、点b=(4,3)のとき、aとbのユークリッド距離は「d(a,b)=√((0-4)2+(0-3)2)=√(16+9)=√25=5」です。
3の場合のユークリッド距離は、点a=(ax,ay,az)、点b=(bx,by,bz)に対し、「d(a,b)=√((ax-bx)2+(ay-by)2+(az-bz)2)」で計算できます。
またℝの場合のユークリッド距離は、点a=(ax)、点b=(bx)に対し、「d(a,b)=√((ax-bx)2)=|ax-bx|」となります。
また、図の右側のような距離は「マンハッタン距離きょり」といい、点a=(ax,ay)、点b=(bx,by)に対し、「d(a,b)=|ax-bx|+|ay-by|」で計算できます。

距離の定義

さて、ユークリッド距離もマンハッタン距離も数学では「距離」として扱えますが、他にどのようなものが距離として扱えるかといいますと、距離の定義の条件を満たすものはすべて数学で「距離」といいます。
集合Mの2つの元を実数ℝに対応付ける写像「d:M×M→ℝ」が以下を満たすとき、dを距離という。
Mの任意の元x、y、zに対し、
  1. d(x,y)≧0。
  2. d(x,y)=0となるのはx=yのとき、またそのときに限る。
  3. d(x,y)=d(y,x)。
  4. d(x,z)≦d(x,y)+d(y,z)。
距離の定義
つまり、ユークリッド距離やマンハッタン距離はこの「距離の定義」を満たしているため、数学で「距離」として扱えるわけです。

距離空間

このように数学では様々な距離を考えることができるため、ℝnなどの集合に対して、どのような距離を使うのかが重要になってきます。
そこで、集合と距離とをセットにし、「(集合,距離)」と表されるようになりました。 これを「距離空間きょりくうかん」といいます。 「空間くうかん」とは、集合と何かしらのルール(距離など)をセットにしたものです。
例えば、ユークリッド距離「d」に対して、(ℝ,d)、(ℝ2,d)、(ℝ3,d)、…、(ℝn,d)はそれぞれ距離空間です。 特にこれらの距離空間には名前が付けられており、それぞれ「1次元ユークリッド空間」、「2次元ユークリッド空間」、「3次元ユークリッド空間」、…、「n次元ユークリッド空間」と呼ばれます。
ユークリッド距離はよく使われるため、単にℝnの集合が示されて距離が示されていないときには、暗黙的にn次元ユークリッド空間だとされることが多いです。

点列の極限

点列の収束

それではいよいよ、「0.9999…=1」を説明します。
まず、f(0)=0.9、f(1)=0.99、f(2)=0.999、f(3)=0.9999、…、f(n)=0.9999…9、という写像「f:ℕ→ℝ」を考えます。 このとき、1次元ユークリッド空間「(ℝ,d)」で考えると、nが大きくなるほど、f(n)と1との距離「d(f(n),1)」は小さくなります。 例えば、n=5のとき、f(n)=0.999999なので、d(f(n),1)=|0.999999-1|=0.000001のようにかなり小さいです(d(f(n),1)の値)。
d(f(n),1)の値
n f(n) d(f(n),1)=|f(n)-1|
0 0.9 0.1
1 0.99 0.01
2 0.999 0.001
3 0.9999 0.0001
4 0.99999 0.00001
5 0.999999 0.000001
では、このd(f(n),1)はどこまで小さくなりますでしょうか。 ε=0.00000000001とするとき、このεよりも小さくなりますでしょうか。 例えばこの場合、極端にn=100などとすると「d(f(n),1)<ε」となることは明らかです。 εがさらに小さくなっても、nをさらに大きくすれば「d(f(n),1)<ε」となるでしょう。
このように、どんなに小さな(ただし0よりは大きい)εが指定されても、nを大きくすれば、nより大きいすべての自然数n'に対しd(f(n'),a)<εとできるとき、「f(n)はaに収束する」といい、「limりみっとn→∞f(n)=a」と表します(limn→∞f(n)=a)。
lim<sub>n→∞</sub>f(n)=a
limn→∞f(n)=a
先ほどのf(0)=0.9、f(1)=0.99、f(2)=0.999、…、という写像の例では、「f(n)は1に収束する」つまり「limn→∞f(n)=1」になります。
「d(f(n),a)<ε」のεを限りなく小さくできるということは、直観的には「nが限りなく大きくなるとき、f(n)はaに限りなく近づく」と考えることもできます。
また、「limn→∞f(n)=a」という数式は、「nが限りなく大きくなるときにf(n)が限りなく近づく値=a」ということを表していますが、「f(n)」自体と「a」とが等しくなるとは限りません。 実際、f(0)=0.9、f(1)=0.99、f(2)=0.999、…、といくら続けても、「f(n)=1」になることはありません。
ちなみに「0.9999…」という数に関して説明すると、f(0)=0.9、f(1)=0.99、f(2)=0.999、…、と続けたときに、f(n)が収束する値が「0.9999…」と定義されています。 f(n)は1に収束するため、これは1に等しい「0.9999…=1」です。
以上が「0.9999…=1」の解説です。

点列の発散

さて、ついでにf(n)が収束しない場合についても解説しておきましょう。 nを限りなく大きくしてもf(n)がどの実数にも収束しないとき、f(n)は「発散はっさんする」といいます。 発散には、「正の無限大に発散する」「負の無限大に発散する」「振動する」の3種類があります(f(n)の発散)。
f(n)の発散
f(n)の発散
図のように、どんなに大きな実数Kが指定されても、nを大きくすれば、nより大きい任意の自然数n'に対しf(n')>Kとできるとき、f(n)は「せい無限大むげんだい発散はっさんする」といい、「limn→∞f(n)=∞」と表します。 直観的には、「nが限りなく大きくなるとき、f(n)が限りなく大きくなること」と言えます。
同様に図のように、どんなに小さな実数Kが指定されても、nを大きくすれば、nより大きい任意の自然数n'に対しf(n')<Kとできるとき、f(n)は「無限大むげんだい発散はっさんする」といい、「limn→∞f(n)=-∞」と表します。 直観的には、「nが限りなく大きくなるとき、f(n)が限りなく小さくなること」と言えます。
これ以外の場合、f(n)は「振動しんどうする」といいます。 収束せず、∞や-∞への発散もしないということは、f(n)は増減を繰り返しているに違いないため「振動」と表現されています。
以上のように、nを限りなく大きくしたときのf(n)の向かう先を、f(n)の「極限きょくげん」といいます。 極限をまとめると、表3-2のようになります。
極限
nが限りなく大きくなるとき f(n)の極限 数式での表現
f(n)はaに限りなく近づく aに収束する limn→∞f(n)=a
f(n)は限りなく大きくなる 正の無限大に発散する limn→∞f(n)=∞
f(n)は限りなく小さくなる 負の無限大に発散する limn→∞f(n)=-∞
それ以外 振動する (なし)

さて、最後にこの「極限」を使って、実数における「ab(累乗)」の拡張を行います。
累乗とは、「23=2×2×2」のように、aと0以上の整数bに対し「aをb回掛けた数」のことでした。 このbを、「2√2」のように、任意の実数に拡張していきます。
このように任意の実数a、bに対して拡張された「ab」のことを、「べき」といいます。

負の数の冪

まずは、「2-2」のような、負の数での冪を定義します。 負の数の冪のように、2bの「b」が1減るごとに「2b」は(1/2)倍されますので、bが負の数のときもその延長で「2-1=1/2」、「2-2=1/4」、…、と自然に定義できます。
負の数の冪
負の数の冪
これを一般化して、「a-b=1/(ab)」と定義します。 例えば、「3-4=1/(34)=1/81」です。

有理数の冪

次は、「21/2」のような、有理数の冪を定義します。
「a3×a2=(a×a×a)×(a×a)=a5」から分かる通り、一般に「ab×ac=ab+c」という法則が成り立ちます。 ここで「21/2×21/2」を考えると、「21/2×21/2=2(1/2)+(1/2)=21=2」となりますが、これは「21/2」を2回掛けた数が「2」になることを意味しますので、「21/2=√2」です。 同様に、「31/2=√3」「51/2=√5」です。
これを一般化して、「a1/b=b√a」と定義します。 「b√a」とは、以前説明した通り「b乗するとaになる数」です。 例えば、「161/4=4√16=2」です。
また、「(a4)3=a4×a4×a4=a4×3」から分かる通り、一般に「(ab)c=ab×c」という法則が成り立ちます。 よって「ab/c」という有理数の冪を考えると、「ab/c=a(1/c)×b=(a1/c)b」とすることで、これまでに説明した内容を使って計算できる形になりますので、あらゆる有理数bに対して「ab」が計算できることが解ります。

無理数の冪

最後に、「2√2」のような、無理数の冪を定義します。
以前説明した通り、「√2」とは「1.41421356…」と延々と続く無理数であるため「2√2」はそのままでは計算できません。 そこで「f(0)=1」、「f(1)=1.4」、「f(2)=1.41」、「f(3)=1.414」、…、という、√2の小数点以下第n桁目を切り捨てる写像を「f(n)」としたときの、「2f(n)」を考えます。
このとき、以前説明した通り「循環する小数は有理数である」ことから、√2の小数点以下第n桁目を切り捨てた「f(n)」は有理数となり分数に直せるため、任意のnに対して「2f(n)」が計算できることになります。
そこで、このnを限りなく大きくしたときに2f(n)が限りなく近づく実数を、「2√2」の値と考えることにします。 つまり、「2√2=limn→∞2f(n)」と定義します。
2f(n)のnを大きくしていくことで、2√2の計算のように「2√2=2.66514414…」となることが解ります。
2√2の計算
n 2f(n)
0 21=2
1 21.4=2.63901582…
2 21.41=2.65737162…
3 21.414=2.66474965…
4 21.4142=2.66511908…
5 21.41421=2.66513756…
6 21.414213=2.66514310…
限りなく大きい 限りなく2.66514414…に近づく
これを一般化して、任意の無理数bに対し「ab」は、bの小数点以下n桁目を切り捨てた数をf(n)として「ab=limn→∞af(n)」と定義します。
以上により、(一部を除く)任意の実数a、bに対して「ab」が定義できました。

00

ただし、以前説明した通り「00」は定義されないことがあります。 なぜなら、f(0)=00.1、f(1)=00.01、f(2)=00.001、…、と考えるとf(n)は0に収束しますが、f(0)=0.10、f(1)=0.010、f(2)=0.0010、…、と考えるとf(n)は1に収束するため、近づき方によって00は1つに定まらないからです。
また、「ab」の値が実数にならない場合も「ab」は定義できません。 例えば、「(-1)1/2」は「(-1)1/2=√(-1)」となりますが、「√(-1)」は実数ではないため定義しません。
ここまでに説明したことを踏まえ、主な冪の法則まとめると、主な冪の法則の通りになります。
憶えるべき冪の法則
主な冪の法則
今回は、距離空間、極限、冪について説明しました。 次回は、三角形や円などの様々な図形について解説します!
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