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Kuina-chan

くいなちゃんAug 22, 2017


6さいからの数学」第4話では、いろいろな小数を紹介し、しかしその集合を考えるときには直感に反する場合があることを解説します!

有理数と実数

第3話で、整数「ℤ」を定義しましたが、今回はこれに小数を含めた集合「ℚ」と「ℝ」を定義します。 そしてそれらの元の個数を考えると直感に反する場合があることを、「写像」や「濃度」といった概念を使って示していきます。

有理数

「整数/整数」の分数で表せる、分母が0以外のすべての数を「有理数ゆうりすう」といいます。 例えば、「2/3」や「0/1」や「-5/4」は有理数です。 「3.3333…」という小数も、「10/3」という分数で表せるので有理数です。
このとき、有理数全体の集合を「ℚ」と表すことにします。 つまり、「ℚ={2/3,0/1,-5/4,3.3333…,…}」です。

実数

有理数以外の小数を「無理数むりすう」といいます。 無理数には、例えば円周率「3.1415926…」や、√2の値「1.41421356…」などがあります。 これらは「整数/整数」の分数で表すことができません。
「1.234123412341234…」のように数字が循環する小数は必ず「整数/整数」の分数に直すことができ、有理数になります。 循環しない小数は必ず無理数になります。
有理数と無理数を合わせて「実数じっすう」といいます。 つまり、実数とはすべての小数のことを意味します。 実数全体の集合を「ℝ」と表すことにします。

包含関係

さて、すべての自然数は、整数の中に含まれます。 また、すべての整数は、有理数の中に含まれます。 従って、今までに紹介した数は主な数の包含関係のような包含関係になります。
自然数ℕ ⊂ 整数ℤ ⊂ 有理数ℚ ⊂ 実数ℝ
主な数の包含関係

主な演算

有理数および実数には、整数と同様に、2つの数a、bに対して、加算「a+b」、減算「a-b」、乗算「a×b」、累乗「ab」、絶対値「|a|」が定義されています。 また0でないbに対して、除算「a÷b」も定義されています。 bが0の場合、例えば「3÷0」などは未定義です。
これに加え、実数には「平方根へいほうこん(√x)」や「冪根べきこん(n√x)」が定義されます。 「るーとa」とは、「x2=a」のときのxの値のことです。 例えば「32=9」なので、「3=√9」です。 またこれを拡張して、「xn=a」のときのxの値を「n√a」と表します。 例えば「24=16」なので、「2=4√16」です。
平方根の値は平方根の値のようになります。
平方根の値
平方根
√0 = 0
√1 = 1
√2 = 1.41421356ひとよひとよにひとみごろ
√3 = 1.7320508ひとなみにおごれや
√4 = 2
√5 = 2.2360679ふじさんろくおうむなく

写像

さて次に、これらの集合を扱う上で重要となる「写像」を説明します。
写像しゃぞう」とは、ある集合のすべての元それぞれをある集合の元に対応付けるもので、「関数かんすう」と呼ばれることもあります。 写像における、元と元とを結ぶ「矢印」の集まりに相当するものが写像です。
写像
写像
写像fが集合Aの元と集合Bの元を対応付けることを「f:A→B」と表します。 またこのとき、集合Aの元aに対応する集合Bの元を「f(a)」と表します。
「f:A→B」のとき、集合Aのどのような元aに対しても、対応する元f(a)は集合Bに1つだけ存在します。 対応先が存在しなかったり、複数存在することはありません。
また写像は、同じ集合の間で対応付けることもできます。 つまり「f:A→A」であっても構いません。
例えば、自然数全体の集合ℕに対し、ℕの元xを2倍する「f(x)=2x」は、写像「f:ℕ→ℕ」となります(「f(x)=2x」の写像)。
「f(x)=2x」の写像
「f(x)=2x」の写像

全射、単射、全単射

「f:A→B」において、Aの元がBのすべての元を余すところなく対応付けている場合、fを「全射ぜんしゃ」といいます。 厳密には、集合Aのすべての元aに対するf(a)を集めたものが集合Bと一致したとき、fは全射です。
また、Aのそれぞれの元に対応するBの元に重複が無いとき、fを「単射たんしゃ」といいます。 厳密には、Aの任意の異なる2つの元a、bに対し、必ずf(a)とf(b)が異なるとき、fは単射です。
写像fが全射かつ単射であるとき、fを「全単射ぜんたんしゃ」といいます。 このとき、Aの元とBの元がちょうど1対1で対応する形になります。
全射、単射、全単射のイメージを全射、単射、全単射にまとめました。
全射、単射、全単射
全射、単射、全単射

逆写像

写像fの矢印の向きを逆にした写像を、fの「逆写像ぎゃくしゃぞう」といい、「f-1」と表します。 厳密には、「f:A→B」「g:B→A」の2つの写像が、Aの任意の元aに対して常に「g(f(a))=a」を満たし、Bの任意の元bに対して常に「f(g(b))=b」を満たすとき、gはfの逆写像「g=f-1」です。
例えば「f(x)=x+2」という写像「f:ℤ→ℤ」と、「g(x)=x-2」という写像「g:ℤ→ℤ」を考えると、「g(f(x))=(x+2)-2=x」および「f(g(x))=(x-2)+2=x」ですので、gはfの逆写像「g=f-1」だといえます(逆写像)。
逆写像
逆写像
写像fが全単射でなければ、fに逆写像は存在しません。 またfが全単射であれば、必ずfの逆写像f-1が存在し、それは1種類しかありません。

濃度

それでは最後に、集合の元の「個数」を一般化した「濃度」というものを考えます。

有限集合の濃度

ある集合Aに対し、その元の個数のことを、集合Aの「濃度のうど」といい「card(A)」と表すことにします。 例えば「A={イヌ,ネコ,ウサギ}」のとき、「card(A)=3」です。
このとき、2つの集合A、Bに対し、それらの元の個数を比較することで、濃度が等しい「card(A)=card(B)」とか、Bの濃度のほうが大きい「card(A)<card(B)」などと言えます。 例えば、「A={イヌ,ネコ,ウサギ}」「B={ミカン、リンゴ、ブドウ}」であるとき、「card(A)=3」「card(B)=3」なので、「card(A)=card(B)」です。
さて、元の個数が有限個の場合はこのように個数を数えることで濃度の比較ができますが、元の個数が無限個になると個数を数えることができなくなって比較できなくなります。 そこで、元の個数の代わりに写像を使うことで、濃度を比較することにします。 濃度の比較のように定義します。
2つの集合A、Bに対し、
  • AとBとの間に全単射の写像が1つでも存在すればcard(A)=card(B)であり、存在しなければcard(A)≠card(B)である。
  • A⊂Bのとき、card(A)≦card(B)である。
濃度の比較
例えば、「A={イヌ,ネコ,ウサギ}」「B={ミカン、リンゴ、ブドウ}」のとき、元を1つずつ対応付ける写像は全単射ですので、「card(A)=card(B)」といえます。
「A={イヌ,ネコ}」「B={イヌ,ネコ,ウサギ}」のとき、元を1つずつ対応付けていくとBの元が1つ余りますので全単射の写像を作ることはできません。 よって「card(A)≠card(B)」です。 またこのとき、「A⊂B」なので「card(A)<card(B)」です。
このように、元の個数を数えなくても、写像を使うことで濃度の比較ができるようになりました。

可算の濃度

さてそれでは、元が無限個の集合同士の濃度を比較してみましょう。 まずは自然数ℕと整数ℤの濃度を比較します。
ℕとℤの対応付けのように写像を作ると、ℤの元に余りも重複もありませんので、これはℕとℤとの間の全単射の写像になります。 よって、card(ℕ)=card(ℤ)です。
ℕとℤの対応付け
ℕとℤの対応付け
ℤはℕを含んでいるため、直感的に考えるとℤの濃度のほうがℕの濃度よりも大きくなりそうですが、このように1対1の対応付けが行えるために同じ濃度となります。 元が無限個の集合は、しばしば直感と異なる結果をもたらしますので慎重に扱う必要があります。
同様に、有理数ℚを考えた場合も、ℕとℚの対応付けのように辿ることでℚの元を網羅することができ、ℕとℚとの間に全単射の写像を作ることができますので、card(ℕ)=card(ℚ)です。
ℕとℚの対応付け
ℕとℚの対応付け
このように自然数ℕと1対1で対応付けられる集合の濃度のことを、「可算かさん濃度のうど」といい「アレフ0」と表します。 すなわち、「card(ℕ)=card(ℤ)=card(ℚ)=ℵ0」です。

カントールの対角線論法

元が無限個の集合の濃度は必ずℵ0になるかというと、そうとも限りません。 例えば実数ℝの濃度は、自然数ℕの濃度よりも大きくなります「card(ℕ)<card(ℝ)」。 ではこれから「カントールの対角線論法たいかくせんろんぽう」と呼ばれる方法で、それを証明してみましょう。
まず、「カントールの対角線論法」では「背理法はいりほう」と呼ばれる証明方法を使います。 背理法とは、「¬pが成り立つと仮定してわざと矛盾を導き消去法でpを証明する」という証明方法で、第1話で解説したように、一般的な数学があらゆる命題pに対して「矛盾が無いこと(pと¬pが同時に証明されないこと)」と「排中律(pか¬pのどちらかが成り立つこと)」を前提としていることを利用したものです。 背理法の流れのような流れになります。
    背理法で証明したい命題をpとしたとき、
  1. まずpの否定である「¬p」が証明されたと仮定する。
  2. すると、矛盾が生じることが判明した。
  3. 数学は矛盾が無いことを前提としているので、命題¬pは成り立ってはならない。
  4. 一般的な数学は「p」と「¬p」のどちらかが成り立つことを前提にしているので、消去法でpが成り立つことになる。
  5. よって、pは定理である。(証明終)
背理法の流れ
それでは、背理法である「カントールの対角線論法」によって、「card(ℕ)<card(ℝ)」となることを見ていきましょう。
まずは「card(ℕ)<card(ℝ)」の否定である、「card(ℕ)≧card(ℝ)」を仮定して矛盾を導きます。 ただし実数ℝは広大すぎるので、ここでは話を単純にするために、ℝの代わりに「0より大きく1より小さい実数」だけに絞った集合「J」を使って進めます。 なお、Jとℝとの間には全単射が作れることが知られていて、card(J)=card(ℝ)と言うことができます。
すると、このとき集合の包含関係「ℕ⊂ℝ」より「card(ℕ)≦card(J)=card(ℝ)」ですから、これに先ほどの「card(ℕ)≧card(ℝ)」を仮定すると、「card(ℕ)=card(J)」とせざるを得なくなり、濃度が等しいことからℕとJとの間に1対1の対応付けが存在することになります。
つまり、例えばℕの元「0」にはJの元「0.1212…」が対応し、ℕの元「1」にはJの元「0.9876…」が対応するといった具合です。 この例を図示すると、カントールの対角線論法のようになります。
カントールの対角線論法
カントールの対角線論法
この図では、「0」番目のJの元の「0桁目」、「1」番目のJの元の「1桁目」、「2」番目のJの元の「2桁目」、…と丸で囲んでいますが、この丸で囲んだ対角線部分の数字を抽出し、それが奇数であれば「2」、偶数であれば「1」とするような数字列の小数を考えます。 すると「0.2122…」となります。 このような小数もまた集合Jのどこかに存在するはずなので、図のように「n」番目のJの元として対応付けておきます。
さてここで、図の「?」で示した部分に何の数字が入るかを考えます。 試しに2を入れると「対角線部分が2で偶数なので1を入れるべき」となり、1を入れると「対角線部分が1で奇数なので2を入れるべき」となって、どのような数字も入れることができません。 つまり「n」番目のJの元として対応付けられないことになります。
よって、「n」番目のJの元として対応付けられることと、対応付けられないことが示されましたので、矛盾します。
以上より、「card(ℕ)≧card(ℝ)」を仮定すると矛盾が生じましたので、「card(ℕ)<card(ℝ)」が証明されます。 以上が「カントールの対角線論法」でした。

連続の濃度

このような実数ℝの濃度のことを、「連続れんぞく濃度のうど」といい「アレフ」と表します。 以上をまとめますと、濃度の大小関係は濃度の大小関係のようになります。
card(∅)=0 < 1 < 2 < … < card(ℕ)=card(ℤ)=card(ℚ)=ℵ0 < card(ℝ)=ℵ
濃度の大小関係
「∅」とは以前に説明した通り、元が1つもない集合「空集合」です。
今回は、有理数と実数および、写像や濃度について解説しました。 次回は、「0.9999…=1」について解説します!
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